21世紀は「脳の世紀」といわれ、脳の理解は人間そのものの理解に通じます。本プログラムは、本学が開学以来求めてきた「全人教育」の科学的基盤として脳研究を推進することで、人間の総合的な理解を目指します。
このプログラムでは「脳」を一つの大規模な情報処理システムと解釈し、行動を生み出す脳の高次情報処理の理解と、その基盤となる遺伝子レベルの情報処理の理解と、より深い人間理解としての発達の計算論的理解を同時並行的に推し進めます。その基本的な理論は、脳を構成する神経細胞の集合のダイナミクスに知識情報が表現されているとするダイナミクス情報表現仮説です。そしてそれらの総合として、脳というシステムに心がやどり、心がより成長して知情意の過程が生まれてくる動的な過程を明らかにすることを目指しています。
この過程は、脳にあるそれぞれの神経活動がオーケストラの各パートの楽器群のように、それぞれの役割を受け持ち、全体が調和して統一のとれた一つの美しいハーモニーを奏でることに例えられます。もしそれぞれのパートがばらばらにメロディーを奏でれば、調和した美しいハーモニーは失われてしまいます。このような視点からの「脳」を様々な分野、角度から横断的に研究していくわけです。
これらの研究は、「全人的人間科学プログラム」として、共同研究の枠を越えた融合研究として展開されてきました。そのような「融合脳研究による人間の総合的理解」こそが、幅広い脳理解と社会への適用による変革を生み出しものと考えます。