ヒトの脳機能を直接調べることができるツールとしてfunctional MRI(fMRI)が使われています。fMRIはMRIの撮像をしながら認知課題等を行うことで、その認知機能に関与する脳部位を特定できます。これまでは健常者の脳機能を明らかにすることを中心に研究が進められてきました。近年、記憶・感情・推論・意思決定などの脳の高次機能を正確にとらえるためにはこれらの基礎研究に加え、それらの機能に何らかの異常をもつ病態脳と比較する臨床研究が重要であると考えられています。例えば記憶といった機能一つをとっても、記憶に関連する脳部位は多くあります。しかし各部位における機能は違っており、その詳細を基礎研究のみで検討することは非常に困難であると考えられます。そのため、そのような障害をもった患者の脳機能を調べることは、脳の各機能の詳細をより明らかにすることができます。またこのような研究は、脳機能を明らかにする基礎研究に役立つだけでなく、病気の原因・病態を細かくつかむことができ今後治療に還元していくことができます。これまで、医学的な臨床研究は医学部を中心とした研究所を中心に行われてきましたが、近年では遺伝子技術・神経画像学技術の進歩により工学部・理学部といった医学部以外でも行われるようになり、その成果は多大なものがあり、期待も大きいといえます。
病態脳研究グループでは、医学部(日本大学・日本医科大学・東京医科歯科大学・順天堂大学・昭和大学・他)と共同研究を進め、各種精神神経疾患の病態の解明を目指すとともに、そこから脳の機能を知っていくということを目指しています。