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    更新日 2025年5月19日

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花菖蒲図鑑

TOP > 花菖蒲図鑑 > 品種一覧-あ行 > 王昭君

おうしょうくん

王昭君

Ousyoukun

江戸系 【花容】平咲きで先端部がやや下垂 【英数】六英 【花色】紺色 大輪 【開花時期】6月中旬から下旬 2008年は6月18日開花、2014年は6月24日開花

分類 : 江戸系の「古花」。平咲きで花被片の先端部がやや下垂する六英花です。
花被 : 形状は丸弁で、周縁部は波を打ったようになります。濃い瑠璃紺色地でわずかに濃い青紫色の筋が入ります。周縁部はわずかに内側に巻いており、脈の間に縮緬構造も見られます。周縁部が内側に巻いていることもあり全体的にしわが多い品種です。アイの黄色の部分の周縁は白色の縁取りがあります。
花柱枝 : 軸方向に垂直に伸長し、花被片と平行になります。薄い青紫色でで、中心部は淡い青紫色、白色の筋が入ります。先端部は裂開して爪状のずい弁が発達します。ずい弁は内にまき、先端部は細かい鋸歯が発達します。ずい弁の色は花被片と同じ青紫色です。
雄しべが軸方向に立ち上がり、筒状の樋弁(肥後系に多い)が形成されることもあります。
備考 : 1898年以前に育成された菖翁花であると言われています。菖翁の著『花菖蒲花銘』にも同名で記述がありますが、花の形態は「牡丹咲きで、花色は紫色で無地である」と記述されています。現存する「王昭君」(本ホームページの写真)は、6英花で形態が異なることになります。よって、明治以前に育成された江戸系の古花であるとする説もありました。

本学で分子生物学的に調べた結果、現存する株(このホームページの写真の株)は菖翁花であることが判明しました(88.8%。根拠は「宇宙」の項目を参照)。
また、この写真のような花容をした「王昭君」と、肥後古花の品種群との遺伝子は78.4%の確率で合致していたので、この形態をした株の「王昭君」が肥後にわたって、肥後古花の品種の育成基になったと考えられます。

ちなみに、肥後系品種には瑠璃色の6英花の品種に多くみられますが、これらのうち、「王昭君」は「三鈷の松」の育成基であることが、分子生物学的に明らかになりました。
参考文献 :
  1. 小林孝至・和田 瞳・人見明佳・田淵俊人.2017.  アイソザイム解析から見た ハナショウブの起源ーノハナショウブとの比較ー.園芸学研究.16(別1):412.
  2. Kobayashi, T. and T.Tabuchi. 2024. Characteristics and apprication style of Japanese irises (Hana-soyubu) 1. Edo-group and Higo group. WOTZ Book. International Society for Horticultural Science. 98.
  3. 中村泰基・平松渚・田淵俊人.2009.ノハナショウブの変異性に関する研究 (第11 報)外花被片に見られる「とさか状突起の構造」について.園芸学研究.8(別1):412.
  4. 田淵俊人・平松渚・中村泰基・坂本瑛恵.2008.日本伝統の園芸植物、ハナショウブの特性に関する研究.(第3報).明治神宮(林苑)のおける土質および水質について.園芸学研究 7(別2):578.
  5. 田淵俊人.2016.肥後花菖蒲の特徴―武士道にもとづいて追及された質実剛健(監修:柴田道夫,花野品種改良の日本史).悠書館,東京.247−248.
  6. 田淵俊人.2016.花菖蒲の品種分化の歴史とその原種ノハナショウブ. 園芸春秋. 11/12号:586.
  7. 田淵俊人.2016.  花菖蒲の維持管理における諸問題の解決法. 東京都公園協会講演要旨集.
  8. 田淵俊人.2016.花の品種改良の日本史(柴田道夫監修).p238−239.悠書 館,東京
  9. 田淵俊人.2016.江戸時代中期から後期―ハナショウブ栽培の飛躍的な発展と菖翁の業績.『花の品種改良の日本史』(柴田道夫監修).悠書館,東京.238−240.
  10. 田淵俊人.2019.ハナショウブの品種分化の歴史と、品種育成の基になった原種のノハナショウブ.京都園芸 第103集:46−50. 京都府立植物園.
  11. 田淵俊人・川口聖加・日高慶士・小林孝至.2023.  エステラーゼアイソザイムを用いた肥後系ハナショウブの品種群の成立に関する研究. 園芸学研究.22(別1):397.
  12. 冨野耕治.1967.東京(江戸)ハナショウブ.p82−83.泰文館,東京.

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