きみがよ
君が代
Kimigayo
伊勢系 | 【花容】垂れ咲き 【英数】三英 上の4枚は2017年6月17日開花、下の4枚は2025年は6月5日開花 |
分類 | : | 伊勢系品種。垂れ咲きの三英花です。 |
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外花被 | : | 青紫地で細い白色の筋が見られます。アイ(弁元の黄色の部分)は太く、周縁部は白色でその筋が花被片の先端に向かって鋭く伸びています。周縁部には著しい縮緬構造が見られ開花が進むにつれて、穏やかに下垂します。花被片の形状は円形です。 |
内花被 | : | 基調色は白色で、周縁部には薄い青紫色が見られます。上の4枚の写真は2017年に開花したものです。2025年に同じ株が開花しましたが、内花被片はやや幅広く直立し、外花被片と同様か藤色で、縮緬状の構造が認められました。この点は、2017年の開花株の花色花とは異なっています。 |
花柱枝 | : | 太く先端部で2つに裂開します。基調色は淡い紫色で縁部は藤色です。花柱枝先端部のずい弁は垂直方向に直立し、先端部は「くも手」(鋸歯状になる)です。2025年の開花では、花柱枝は藤色で中心部が白色、ずい弁は立ち上がり、先端部に「くも手」が発達しています。 |
備考 | : | 花径は20cm程度で、開花が進むにつれて大きく下垂します。「君が代」という品種名は、伊勢系花菖蒲には2つ存在します(花菖蒲品種総目録)。1つ目は1907年の記録で、外花被片に紅砂子模様(外花被片全体に、細かい砂をまぶしたような模様)があるとのことです。2つ目は、紫色の3英花で育成年代は不明、花柱枝に「くも手」が出現すると記載されています。 伊勢系古花の品種同定については、育成された時期や育成者に関する確かな文献が少ないので、1904年の『玉蝉花栽培法稿本』と、1907年の『明治40年改正伊勢玉蝉花名鑑』に記載されている品種名と、その特徴を記載した文章を基にして判断しています(富野、1968;田淵、2016)。 本学で保有する株は、花器官の形質は前述の2つ目の「君が代」と同じであることから、この株由来のものとなりますので、今後とも維持・保存に務めることとしました。 2017年に開花のものと、2025年に開花のものにつき、花器官を比較すると、外花被片に白色の筋がある点では一致しましたが、内花被片の形質が異なっていました。 このような花色の経年の変異は、他の系統や品種で良く知られた現象ですので、株分け等による、いわゆる「芽変わり、専門的には芽条変異、枝変わりと称しています」に該当する変異か、栽培環境によるものか、以降も科学的な立場で引き続き研究をしていく予定です。 |
参考文献 | : | ・花菖蒲品種総目録. ・広田稲雄・竹島定吉・長林堅次郎氏による、『明治40年改正伊勢玉蝉花名鑑』 ・富野耕治.1967.花菖蒲.泰文館. ・田淵俊人.2016.花の品種改良の日本史(柴田道夫編).伊勢ハナショウブの成立.悠書館,東京.p250−251. ・Tabuchi, T. and T.Kobayashi. 2024. Characteristics and apprication style of Japanese irises (Hana-syoubu) 2.Ise-group. WORZ Book. 99. International Society for Horticultural Science. |