大脳皮質には、様々な発火特性を示すニューロンが存在し、定電流入力に対する発火パターンに基づいて、分類されています(e.g. regularly spiking neurons, chattering neurons, intrinsically bursting neuron, fast spiking neurons)。最も多数を占める、等間隔で規則的に発火するレギュラースパイキングニューロンは、さらに、その力学系の分岐特性から、クラスIとクラスIIに分類されます。クラスIニューロンは、入力電流を大きくしていくに従い、スパイク頻度が0Hzから徐々に高くなっていきますが、クラスIIニューロンはある電流レベルで、不連続的にジャンプし、いきなり高頻度で発火するようになります。ニューロンの分類によって、含まれるイオンチャネルの性質や、定電流入力・周期的入力に対する分岐特性などの違いは、詳しく調べられていますが、in vivo に近い自然な状態での振舞いの違いについては、あまり調べられていません。
我々は、この問題に取り組み、in vivo のようなゆらぎのある入力を受けているときのクラスI・クラスIIニューロンから発生するスパイク間隔の統計性の違いを調べました (Hosaka et al. 2002,2004,2005,2006)。また、局所回路モデルでの振舞いについて、調べてきました。まず、各ニューロンが周期的な発火に近い状態の場合、位相振動子の結合系に縮約する理論的枠組を構築し、錐体細胞からなる局所回路モデル (Fukai et al. 2002; Aoyagi et al 2003; Nomura et al. 2004)、ファーストスパイキングニューロンからなる局所回路モデル (Nomura et al. 2003)、チャタリングニューロンからなる局所回路モデル (Takekawa et al. 2004) における集団的な同期発火の性質について調べました。また、もはや周期的な発火からはずれて、カオス的な振舞いをする状態が、ギャップジャンクションと呼ばれる電気的な結合を持つ局所回路モデルで顕れることを報告しました (Fujii et al. 2004; Tsuda et al. 2004; Tsuda and Fujii 2004; Fujii and Tsuda 2004)。