田淵俊人のホームページ
  • 研究テーマ一覧
  • 花菖蒲図鑑
    更新日 2025年5月19日

    • 用語解説
    • 品種一覧
    • 花菖蒲の起源(最新の科学的データに基づいて明らかになりました。2023年5月14日)
    • 文献一覧
    • 年代別 本学における栽培種のハナショウブ、野生種のノハナショウブの研究業績一覧
    • 写真撮影方法
    • 植え替えのポイント
    • 土の種類:有機質肥料や発酵促進剤は不要です
    • 2〜3月の管理作業
    • 4〜5月の栽培のポイント
    • 5月初旬の栽培方法
    • 夏場の作業
    • 秋の栽培のポイント
    • 根の生育診断−茶色になった葉はすぐに取り除きます
    • 10月下旬の株のチェック(根の張りを特に注意)
    • 江戸系、肥後系、伊勢系の「古花」の保存法
  • ノハナショウブ
  • 玉川学園の野鳥
  • 相模原市緑区の野鳥
  • 社会活動
  • プレスリリース
  • 教育研究活動
  • 卒業研究テーマ
  • 玉川大学収穫祭
  • 学会
  • 論文
  • 書籍紹介
  • プロフィール
  • リンク
  • トップページ
  • 農学部オフィシャルサイト
  • 玉川大学・学園総合サイト

花菖蒲図鑑

TOP > 花菖蒲図鑑 > 品種一覧-さ行 > 酒中花

しゅちゅうか

酒中花

Shuchuuka

江戸系 【英数】六英 【花色】白 紅覆輪 中輪 【開花時期】6月中旬(2023年は6月16日開花)

分類 : 江戸時代に育成され栽培されてきた「江戸古花」の品種です。
花被 : 楕円形、あるいは丸弁で、平咲きで六英、開花が進行するにつれて花被片の先端部が下垂します。花被片全体に細かい皺があります。白色地で、周縁部には紅色の覆輪が見られます。また、白地の花被片の周縁部付近や脈と脈の間にも、しばしば紅紫色の斑点状の模様が見られることがあります。内花被片となる小さな花被片の方が、紅紫色が濃い傾向にあります。
花柱枝 : 花被片に沿うように発達します。花色は白色ですが、やや黄色味がかった色になることもあります。先端部で裂開して円形のずい弁が発達します。細かい鋸歯が見られますが、目立ちません。先端部に外花被片と同様に紅紫色の覆輪が見られます。
備考 : 1885年以前(明治18年以前)に菖翁により育成された「菖翁花」であると言われていますが詳細は不明で、明治時代に江戸・堀切の花菖蒲園の一つ、小高園の図に登場することから、この時代に育成されたとする説もあります。伊勢系の古い品種にも同名の品種がありますので分類には注意が必要です。
平咲きで開花が進行する2日目には花被片が下垂します。花被片は厚く、硬い形質で花径は15p〜20pの中輪花に相当します。
本品種は、花色において年次変化が多く、白地に紅紫色の覆輪が入る程度や、その濃淡には年次変化があり、紅紫色の覆輪の幅が広い場合には、「底白」といって、花被片の基部のみが白色に見える場合もあります。「天晴」(肥後古花)」や「八女姿」(肥後古花)などと類似します。花被片の厚さが薄い場合には、紅紫色が淡くなる傾向がありますが、継続した調査を行っています。
本品種のように、六英花で白地に紅紫色の覆輪となる品種は、「舞妓」(肥後古花)、「紅扶養」(肥後古花)、「雲井の雁」(新花、肥後花容)、「七彩の夢」(新花、肥後花容)、「麗月」(肥後古花)、「登竜門」(肥後古花)にも見受けられます。また、三英花にも、このような花色のパターンを持つ品種があります(「立田川」(江戸古花)、「君子国」(肥後古花)、「万子の声」(肥後古花)、など。これらは非常に見分けがつきにくいので、本学では、明治神宮との共同研究で分譲頂いた品種を掲載しました。

なお、本学での研究により、「菖翁花」の「立田川」(三英花)と、本品種「酒中花」(六英花)は花被片数が異なりますが、肥後系品種群の育成に寄与したことが分子生物学的に明らかになっています。いずれの品種も、肥後・満月会品種育成への寄与率は82%、同じく西田信常氏育成の品種群への寄与率は81%ですので、品種の区別がつきにくい原因の一つになっているものと考えられます。

花菖蒲園で見ることのできる品種は、継続した維持・管理がしやすい新花が植栽されているようです。
文献 :
  • 田淵俊人.ハナショウブ.花の品種改良の日本史(柴田道夫監修).悠書館,東京.245−250.
  • 田淵俊人・川口聖加・日高慶士・小林孝至.2023.  エステラーゼアイソザイムを用いた肥後系ハナショウブの 品種群の成立に関する研究.園芸学研究.22(1):156.

戻る

▲TOP

当サイトの全ての文章・写真・図版の無断転載を禁じます。
個人情報保護 | 著作権・リンク | このサイトについて
Copyright (C) Tamagawa Academy & University 1996- All Rights Reserved.