相次ぐ国内グリーンボンド発行とその意義
案ずるよりも生むが易し

島義夫(ファイナンス・金融)

今年3月末に環境省より「グリーンボンドガイドライン2017年版」が発表されましたが、10月に入り、この国内基準およびグローバル基準GBPに準拠した初のグリーンボンド(GB)発行が相次いで発表されています。10月10日には鉄道・運輸機構による神奈川県における鉄道工事を資金使途とする本邦初となる国内基準に準拠したGB発行が、11日にはみずほフィナンシャルグループ初の5億ユーロのGB発行が発表され、さらに、12日には三井住友フィナンシャルグループによる同社初の国内基準準拠のGB5億ユーロの発行が発表されています。学生諸君にはこのような生の経済・企業の動きに注目してほしい。
本邦初となる鉄道・運輸機構のGBは環境省の「平成29年度グリーンボンド発行モデル創出事業に係るモデル発行事例」となっています。私も同事業の審査委員会委員として審査に携わりました。同様なGB発行の動きが加速することを願っています。
http://www.env.go.jp/press/104660.html

昨年は、パリ協定への米国のオバマ政権と中国の参加により、人類が一丸となって温暖化など地球環境問題に取り組むことへの希望が生まれました。ところが、米国のトランプ新政権がその後突然、パリ協定からの離脱を発表して世界を驚かせました。そのようなことがあったのですが、米国の良識ある政治家、カリフォルニア州をはじめとする地方自治体、そして大企業の経営者達は相次いで、米国政府の方針にもかかわらず、環境負荷を減らす取り組みを継続すると表明し世界を安心させました。また、トランプ大統領も側近のアドバイスを受けてパリ協定にとどまる決断をするとの観測もあります。
GBに関する国内版のガイドラインの意義は、国際基準に準拠しつつ国内特有の制度や慣行も考慮してGB発行を推進するというところにあります。今後も、国内基準に基づくGB発行は様々なかたちで続くでしょう。どのような業態の企業であれ、企業活動に関して温暖化効果ガスを減らすような設備への乗換・更新は可能です。あらゆる企業が通常の設備投資に一工夫加えるだけでグリーン投資を実行できるでしょう。
今回の銀行のGB発行も注目されます。これは、銀行自体がグリーン投資を行うというよりは、グリーン投資を行う企業に銀行が資金を提供するという仕組みです。今後は、政府・自治体の行う公共事業の一環として発行されるGBもあるでしょう。また、再生可能エネルギー投資を複数束ねて証券化を使った発行、あるいは、小規模なグリーン投資がクラウドファンディングを利用して資金を調達する事例なども生まれるかもしれません。
一時は「日本にグリーンボンドの市場ができるのか」という懐疑論もありましたが、「案ずるよりも生むが易し」、あるいは、何事も「なせば成る」。

〒194-8610 東京都町田市玉川学園6-1-1
Tel:042-739-8111(代表)

玉川大学入試Navi

ページトップへ