Department of Information & Communication Technology
インターネットの急速な普及により、ますます複合化する情報化社会の中で、ものづくりの基盤も「情報」にシフトしています。
人間をサポートする多種多様なロボット技術や、「人と人をつなぐ」 ことで社会を動かす情報通信技術の分野は、今や日本を支える最先端の成長産業と言えます。
このような時代の要請に応えるべく、2017年4月にロボットや情報通信の技術に学びの焦点をあてた「情報通信工学科」を開設。
情報通信技術を武器に、“すべてのモノが情報につながる社会”で活躍する次世代のエンジニアを育成します。
認知ロボティクス研究室
量子センサー研究室
情報通信工学科では、進歩著しいICT(情報通信技術)を中心に「人と人をつなぐ」次世代の技術と手法を学び、研究します。1・2年次で学びの基盤となる「数学」「物理」を修得した上で、専門分野の学びへ移行していきます。「電気回路入門」「センサ工学」「インテリジェントデバイス入門」などの科目を通して、機器に組み込まれるプログラミングとセンシングの基礎をハード・ソフトの両面から徹底的に修得。
これらの科目は、知能ロボットや情報セキュリティ・通信技術の専門科目と関連させながら学ぶことができます。また、体験的な教育を重視。さらに、1年次の「チャンピオンシップ」から4年次の「卒業プロジェクト」にいたるまで、各学期に実験・実習科目を配置しており、情報通信技術はもちろんプレゼンテーション技法、コミュニケーション技術も高めます。
人工知能・脳科学
組込みプログラミングの経験を通して知的に動くモノの仕掛けを知り、人工知能の基礎を学ぶとともに、ビッグデータ処理や脳科学など、その関連知識を修得します。
自動運転技術(量子レーダー)
いかなる天候にも対応できるカメラ機能を実現する量子レーダーの基礎を学びます。また情報通信技術の専門科目とも関連づけながら、情報ネットワークについて学修します。
脳科学研究所、量子情報科学研究所との連携も大きな特徴のひとつです。研究所との連携により、脳科学、ロボット、量子情報の分野をさらに深く学びたい学生に対しても、専門教育が学べるような学修環境を整えています。
プログラミングを理解するための体験型の授業です。チャンピオンシップは大きく3期に分けられ、学生は2名の教員から異なる分野の演習を受けます。教員1名に対し学生は7~8名。学生たちは机を囲み、一心に手元の作業に集中します。レーザーの屈折率の計算、超電導の空気抵抗の考察、ロボット制御など、演習では教員の専門分野に取り組みます。その中で学生が自ら課題を決めて挑戦することで、工学の基礎知識が早期に、かつ着実に養われていきます。チャンピオンシップの締めくくりは、電子基板を用いた自走ロボットの作製。壁に囲まれたコースを走らせ、タイムと正確さで技術を競います。2つの研究室で得た学びを振り返り、秋学期から始まるプログラミングなどの専門的な学修につなげていきます。
自動車の衝突防止システムの車載レーダーや、気象予報のための雨雲レーダーなど、身近なところで私たちの生活を支えているレーダー技術について学びます。レーダー機構の基礎となる電磁気学、光学、統計物理学について基礎から解説を行うことにより、レーダーがどのような原理で動作しているかを理解することが可能になります。また最近のトピックスとして、量子レーダーについても取り上げます。
※1 小学校教諭2種免許状を取得するには費用が発生します。
また別途、履修条件があります。
※2 履修には条件があります。
2006年からロボカップに参加し「@ホームリーグ」という競技への挑戦を続けています。注文を受けてお買い物するなどの日常に即したテーマで、その達成度を点数で競うというもの。人工知能をどのように使うかのアイデアや、人工知能がテーマを達成できるようにいかに学習させるかに重点を置いており、自分たちの達成度が点数として客観的な評価をされるので、参加する学生にとっても貴重なトレーニングの場になっています。
研究室Pick Up
ロボットを制御する人工知能に、いかに学習を施し育てるかを研究し、家庭や介護の現場などで人間をサポートするホームサービスロボットに応用。また、ロボカップにも毎年参加し、2回の世界大会優勝の実績がある研究室です。
ロボットに組み込まれる人工知能(AI)の開発が、主な研究テーマです。特にホームサービスロボットと呼んでいる、家庭や介護、保育の現場などで人間の生活や行動を助けるロボットに力を入れています。例えば現在取り組んでいるのが、トヨタ自動車が開発したHSRというロボットを使った産学協同プロジェクト。搭載されている人工知能に目的に応じた学習を施し、制御するソフトの開発などを担当しています。これは人がいる場所で、困っていることをサポートするというもの。掃除の手伝いをするとか、欲しいものを棚から取って手渡すようなことです。実は、人の求めに応じて床に落ちているものを拾いあげ持ってくるような、何気ないことが意外に難しいのがロボットです。ユーザーが頼んだ言葉を正確に聞き取り理解する音声認識能力や、落ちているものがゴミかそうじゃないかを判断するような識別能力が必要です。さらに、ユーザーが何を望んでいるのかを推測し、拾い上げて持ってきて手渡すという、いくつかの行動を連続して行うようなことは、人工知能にとってかなり高度な作業です。こういった人工知能の学習実験を、研究室内に作った家庭を模したラボで行っています。
人工知能に関わる研究者の夢は、いかに人間に近づけるかです。その手法として、乳幼児の知能の発達にヒントを得て、脳科学の分野からの研究にも取り組んでいます。玉川大学脳科学研究所にある『赤ちゃんラボ』と協力して、赤ちゃんがゼロから学習していく認知発達の過程を解き明かし、それを人工知能の学習に応用しようという試みに力を入れてきました。また、ロボカップにも長年参加して、これまで世界大会の優勝も果たしています。3年次から研究室に所属した学生は、まずロボカップで研究ノウハウを身につけ、腕を磨きます。
ロボットの研究は、さまざまな分野や技術が総合的に混ざったもので、既存の技術をいかに組み合わせて新たな価値を生み出すかということも重要です。学生には、全体を総合的に見られる能力や、ユーザーの側に立って考えられる柔軟な思考を身につけて欲しいと考えています。
岡田 浩之教授
東京農工大学大学院生物システム応用科学研究科修了。博士(工学)。(株)富士通研究所、東海大学理学部助教授を経て2006年より玉川大学工学部知能情報システム学科教授。2008年より機械情報システム学科教授、2017年から情報通信工学科教授。
工学部 機械情報システム学科3年 長瀬 夕佳さん
高校時代にASIMOに興味を持ったことがきっかけで、ロボット関連の研究がしたいと考え、ロボカップで実績があった玉川大学工学部へ進学。私は最初からこの研究室に入ろうと決めていたので、1年次からほぼ毎日、研究室に顔を出していました。最初は雑用や先輩の研究の手伝いをしていましたが、ようやく自分でプログラムを書けるようになって、今、本当に楽しいと感じています。
ロボカップでは、ロボットが上手く動けば嬉しく、動かなければ悔しいと、いろいろな感情が生まれてモチベーションにつながっています。HSRプロジェクトにも参加し、似たような物体を見分ける画像認識をテーマに取り組んでいます。
先日はトヨタ自動車主催で、HSRを使った研究を行っている学生が集う交流会に参加し、他大学の学生やトヨタの技術者と直かに話せたことが、とても刺激になりました。今後は大学院に進学して、さらにロボットや人工知能の研究を突きつめたいと考えています。
※取材当時