研究のキーワード
可視光通信
光無線通信

私は、無線通信、中でも、可視光通信、光無線通信を研究テーマとしています。
人類は、太古の昔より、互いに遠方にいる者同士、コミュニケーションを図る手段として、光を用いてきました。皆さんも、時代劇で、狼煙をあげ、味方と共に敵方に総攻撃をかける戦国武将の姿を観たことがあると思います。これも広義の可視光通信です。最古の文献記録として、紀元前1世紀、司馬遷『史記』第4巻 周本紀 宜臼において、紀元前8世紀、周朝第12代幽王が后妃褒姒を笑わせようと、狼煙をあげ過ぎて、兵士の信頼を失ったため、最終的に国が滅亡した逸話が残されています。日本でも、この歴史は『平家物語 巻第二 烽火之沙汰』で取り上げられています。この逸話には、今日も、情報通信が変わらず持ち続ける長所(正確に人の意思を遠方へ伝えるという人類の挑戦)と短所(誤報、フェイクニュース)の両面が、歴史として隠されています。
可視光通信の長所は、目に見えない電波と異なり、通信経路が人の目に見える安心感、そして、今日、私達の生活に溶け込む生活インフラ、LED照明を通信に転用できる点にあります。一方で、可視光通信の受信機である、フォトダイオード、イメージセンサが、各々、光信号の混信、低フレームレートと画像処理負荷という物理的な短所を持ち、可視光通信の応用発展を阻んでいました。そこで、私は、博士学位論文として、可視光通信分野で注目され始めていたDMDを用いたプロジェクタを白色照明型送信機として用い、送信機側で空間変調を行うことを提案し、デルタ-シグマ変調によりアナログ信号をデジタル信号として直接伝送する方式、フリッカーを軽減した2パルス位置変調により位置依存情報を表すデジタル信号を伝送する方式について、基礎実験を行いました。これまで低速で移動するロボットを制御するような応用でしか考えられなかった可視光通信が、今後、ドローンのように高速で移動する物体との通信に応用できる可能性の一つを示唆しました。今後、更なる応用に挑戦していきたいと考えています。

玉川学園では、小原國芳先生が提唱された「全人教育」に基づく教育・研究が展開されています。皆さんには、是非、若き日の小原國芳先生が、電信技手として勉学に励まれた頃に想いを馳せ、勉学・研究に励んで頂きたいと思います。研究では、是非、皆さんが持つ若き柔軟な発想で自分にしかできない新しいモノづくりに挑戦して欲しいです。また、私自身も、理科・数学・技術・工業の教員免許を持ち、教職経験がある者として、教職志望学生も、積極的に応援したいと考えています。
しかし、学生生活の醍醐味は、勉学・研究だけではありません。友人・教職員と共に、様々な体験、かけがえのない思い出を重ねてこそ、「全人教育」によるSTREAM人材が育つものと思います。小原國芳先生が、スキー界の革命児ハンネス・シュナイダー氏を招聘した逸話も有名です。私は、シュナイダー氏ほどではないですが、公認スキー指導者資格も有し、近年、玉川大学が力を入れている野球も愛しています。研究する時は、共に没頭し、その合間の休憩にはキャッチボール、そして、冬はスキー旅行。ポスト・コロナ時代でしょうが、そのような教育・研究を、皆さんと共に展開できることを夢見ています。