研究のキーワード
グラフ理論
離散数学
組合せ論

私が専門とするグラフ理論とは、離散グラフと呼ばれるいくつかの頂点と、頂点同士を結ぶ辺からなる組み合わせ構造の性質を研究する学問です。離散グラフに聞きなじみがない方もいるかもしれませんが、地下鉄の路線図や分子モデルは離散グラフの代表例です。ほかにも一人ひとりの人間を頂点とし交友関係のある人同士を辺で結ぶことで、人間関係を表現する離散グラフが得られます。この人間関係に関する離散グラフを分析すれば、集団の中で誰が中心人物に位置しており、大集団を構成する小集団がどのように存在しているのか、といったことがわかります。ビッグデータ時代において、ひとつ一つのデータを分析するだけでなく、複数のデータがどのように結びついて全体としてどのような性質を持っているのかを解析することが重要となっています。データ分析に強力な武器となるグラフ理論が今大きな注目を集めています。
私は平面上に辺の交差なく描くことができる平面グラフの彩色問題を中心に研究しています。平面上に描かれた白地図のそれぞれの国を、どの国も隣り合う国とは異なる色で塗ることを考えたとき、たかだか4色あれば十分である、という主張の「四色定理」が彩色問題における最も有名な定理です。少ない色数で塗るためにはどのような条件を加えればよいか、平面以外のほかの曲面上に描かれたグラフでは必要な色数はどのように変わるか、といった問題に取り組んでいます。

2022年度の高等学校新指導要領から数学活用が科目としてなくなり、その内容が数ABCに分割して受け継がれ、身の回りの問題から数学の問題を見出し抽出する、ということを教員全員が生徒に教えることになります。グラフ理論をはじめとする離散数学では、物を数えるという素朴な観察から始めて、当たり前にわかることを積み上げていく、という数学的態度を大事にしています。離散数学の考え方を知ることは教育現場で間違いなく役に立つことでしょう。離散数学をはじめとする様々な数学を題材に、学生の皆さんと数学の奥深さを共有したいと考えています。