Guest Speaker

2005年春学期に開講している「英語リテラシー3」に、小学部の英語科主任の小川先生をお招きしました。小川先生は、これまでも小学部英語授業見学のコーディネートをしてくださり、教育学部の学生達の質問にも毎回丁寧にご回答いただいています。また、小学部の英語ボランティアの機会も学生達に提供していただいています。今回は、児童・生徒に英語を教える資格に関わる英語リテラシー3を受講している学生達対象に、子供に英語を教えることについて、小学部での実践例をあげながらわかりやすくお話いただきました。小学部生による英語劇のビデオも見せていただき、学生達は「自分が教員になった時に、こんな子供達に教えるのか!」とショックを受けた学生もおりましたが、「大学生が負けていられない!」と良い刺激をいただきました。

当日の内容

1. 玉川学園小学部の英語教育の概要

学生達が受けてきた英語教育と比較しながら、小学部での英語教育について説明していただきました。玉川学園小学部の英語教育の目標は、新しいk-12(幼稚園から高校まで)システムのRISE &SHINE(Reading International Standard of English and Students Having InterNational Experience)カリキュラム委員会で作成しています。1〜2年生は25分の英語授業を週2回、年間役60回受けます。3〜6年生は、45分の英語授業を週2回、年間60回受けます。どの学年も外国人の先生と日本人(ほとんどNativeと同じレベルの英語)の先生が受け持ちます。外国人の先生も専任なので、英語の授業だけに関わるのではなく、全ての学校行事に関わっていく中で、他の日本人の教員と同じように子供と関わっていきます。なので、玉川の外国人の先生方は、一般の公立学校などのAET(Assistant English Teacher)とは全く違う位置付けです。総合科の内容と密接にリンクした内容を具体的に示されながら、教師が子供のニーズをしっかり読み取っていくことの大切さについて話してくださいました。以下、各学年ごとの指導単元です。詳しい、小学部英語授業についての内容は、これまでに見学した報告書(報告1報告2報告3報告4報告5報告6)を参考にしてください。どの回も小川先生がコーディネートしてくださっています。

1年

あいさつ、色、数(1〜10)、形、クリスマス、動物園

2年

気持ち、数(11〜100)、動きや遊びの言葉、ハロウィン、家族、洋服

3年

アルファベット、好きな物、持っているもの、ハンバーガーショップ、劇

4年

自己紹介、職業、様子を表す言葉、スーパーマーケット、スキット

5年

場所を表す言葉、家族や学校の紹介、E-mailを送ろう、自然と地球、天候

6年

海外の友達、色々なQ&A、〜をしてます、私達の待ち、お話作り

 

2. カリキュラム作成について

2006年度からの玉川学園の新しいシステム4-4-4制に向けてのカリキュラムについて、ご説明いただきました。4-4-4制では、小学校1年生から4年生までがFirst Division、小学校5年生から中学2年生までがMiddle Division、中学3年生から高校3年生までがUpper Divisionとなります。First Divisionの英語科教育目標は、「英語を聞くこと、話すこと、読むこと、書くことを通して英語に親しみ、実践的コミュニケーション能力の基礎を養い、英語や異文化に対する興味関心の芽を育む」です。具体的な到達目標として5つの分野にわけています。評価は絶対評価で、5段階に分けて、各学年ごとの観点から評価します。

  1. 聞くこと・話すこと
    短い文章を聞き取り、その大意を理解し、場面や状況を考え質疑応答ができる。
  2. 読むこと・書くこと
    使用頻度の高い短い単語や文章を、読んだり書き写したりできる。
  3. パフォーマンス
    身近なことがらについて、自分の伝えたいことや知りたいことを、既習の英文を用いてパフォーマンスができる。
  4. 態度
    学習活動に前向きに取組み、自分から内容をくみ取り、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を培う。
  5. 異文化理解
    外国の小学生との交流活動を通して、異文化に興味関心を持つ。

 

3. 実践から

「買い物ごっこ」の指導を例にあげ、いかに子供の「話したい!」「○○って何て言うの?」という気持ちを駆り立てる、そんな状況をつくることの大切さについて話していただきました。例えば、ハンバーガーショップはどこに行ってもあるし、メニューもたいてい決まっています。また、子供はたいていハンバーガーが大好きなので、子供がとびつくトピックです。そこで学べることは、外国のコインの呼び方、数え方、使い方から、お金に描かれた人物の話など、お金だけでも話は広がっていきます。英語の授業に関しては、周囲の子供達同士が協力して教えあってもいいことになっているので(先生は英語で授業をしているので)、子供は英語言語だけでなく、お互いに協力する術も身に付けていきます。子供同士の「上手な教え方」を学ぶこともコミュニケーション能力を育てていく上で大切なことだからです。英語という授業ではありますが、小学校での英語は英語だけを教えていくわけではないからです。どの教科にも当てはまりますが、特に「子供を見とる」ということを英語では大切にしていますし、少人数でやっていることもあり1人1人を見てあげられる教科です。。「子供を見とる」とは、誰があたって、誰があたってないのか、誰が手を挙げて、誰が手を挙げていなかったのか、教師がきちんと把握することです。そして、手が挙がっていなかった子供には質問のリードをしてもらうなど、何らかの活躍の場を与えられることです。どの子供も「参加した!」という満足感を持って教室を出ていけるように配慮することです。大切なことは、教師が余裕を持って、子供に対応していくことです。

授業以外でも、色々なプログラムがあります。土曜日の課外活動プログラムには、1〜6年生が自由に参加できるサポート・プログラム、帰国生クラスのSTART(STudy Abroad Returnees at Tamagawa)プログラム、英検準備学習会、姉妹校訪問のための準備学習会などがあります。小川先生のお話から、授業はもちろんですが、教師は、色々なことを同時進行させていける柔軟性と計画性、実行力がなくてはならないということを学生達は実感しました。

 

学生の感想

今日のお話を聞いて気が付いたこと

今日のお話を聞いて考えたこと

Shigeru

玉川学園の小学部における英語教育の熱心さとその徹底ぶりに驚いた。私も夏に2回ほど英語の授業のアシスタントボランティアとして参加させていただいたことがあるが、やはり英語にとても親しんでいると感じた。それはあいさつがとても自然に出てきていた様子からも伺えた。それは小川先生がおっしゃっていた、「英語と触れ合う」ことが普段から実践されている証拠だろう。

また小川先生の英語授業の具体的な実践例はとても参考になった。やはり、最初から文法や単語を暗記するような指導では英語を学習させる動機付けを上手くできないと思う。だからこそ、ワークショップや身近にあるものを活かし、児童の興味を惹き付け、自然に英語と触れ合う、楽しい授業が理想的なのだと感じた。私も小学生の時にそういった経験を積むことができれば、もっとより英語を楽しく学べていただろうにと思う。先生の「英語を使って視野を広く持てるように」の理念に私はとても共感し、その理念はとても重要であると感じた。

将来私も、小学校で英語を教えることができたら良いなと思っているので、どういった英語教育が小学生の発達段階に適しているのか、どういった教材が児童にとって魅力的か、どんな授業なら英語が楽しいと感じられるか、英語を話せる・書けることの楽しさ・喜びをどうやったら感じさせられるか、どうすれば自主的に英語を学べるようになるかなど考えたことはいくつもある。こういった悩みを抱えるなかで、英語を楽しく学び、国際理解のできる、視野の広い児童に育てられるようになりたいと切に願うようになった。今回聞いたお話と自分が今まで経験してきた「英語」に関する知識を活かしていきたい。



Ai

いかに子供たちの視線を集めるかという大変さを知るとともに子供が興味の持てる環境づくりの方法を教わることができました。また子供とのコミュニケーション、先生としての立場からの考え方でのお話を聞いた中で、英語に興味、関心のない子どもは先生が悪いだけではなく、子ども自身の身になって「なぜ嫌いになってしまったの?」と聞ける余裕がもてる必要性を学びました。また子どもたちは音に敏感であること、色んなものに興味を持つことを知ることができました。また、英語を子どもたちに教える上での注意点、毎日のミーティング、他の先生方との連携の大切さを知ることができました。

教える対象が成長段階における小学生ということもあり、さまざまなプラン作りを必要とするのだということを学ぶことができました。色々な視線からのカリキュラム作りの必要性も学ぶことができたように思えます。自分が将来英語を子どもたちに教える立場になるチャンスがあったら、ただ教科書等で教えるのではなく子どもの興味関心を大切にし、レベルに合わせた授業を行いたいとも思いました。

Sai

アンテナを広げて、子どもの興味を拾い上げる。それを教材として活かし、英語という科目だけでなく、さらに広がった他科目の学びにもなるようにしていらっしゃった。又、身近にあるもの、興味のあることを題材にして、子ども達の経験として心に残るような授業を行っていた。子ども達が、自発的に知ろう・学ぼうとする状況を作っている。様々な活動を取り入れ、丁寧に子ども達を見ていくことで、子ども達一人一人の良さを発見し、それを大事にしながら授業を進めていた。





小川先生のお話は、とても面白かったです。小学部の英語教育についてお話してくださる時に、私たち一人一人に自分自身の英語教育についてたずねていました。私は、ほとんど覚えていませんでした。そのときに、「子どもの心に刻めるような経験をさせてあげられるか、興味を持って取り組ませられるか」これが、いかに大切であるかを感じました。机に向かって文法だけをやっている授業ではなく、実際に自分の生活に照らし合わせたことを題材に子どもが主体となって行うことによって、身につくだけでなく、自信もつくのではないかと思いました。又、小さなことも、好奇心を引き出す種にして学びに繋げていっているように思いました。そして、小川先生自身も、子ども達の好奇心にアンテナを張りながら様々なことを調べて知っていくことで、自分の知識の肥やしにして、とても楽しんでいらっしゃるように感じました。私も生徒として、この授業プログラムを受けてみたいと思いました。

Chika

授業のカリキュラムを見てみると、内容がやはり季節と関係している。また、他の教科ともよく関係していた。

パソコンのHPを利用して子どもたちと家庭から報告できるシステムなど、学校だけでなく、家庭も一緒に子どもの教育にあたっていこうとする考えで行われているということ。

英語のカリキュラムをこんなに綿密に作成して行っていることがすごいと思った。それぞれの月の季節の事柄や、他の教科、子供の生活などと関係するような内容、これが大切なのだなと学んだ。子どもが自ら発言したり、考えたりして、楽しい英語の授業にするためにも、教師が子どもを見取ることも大切だということも学んだ。誰が発言して、誰が発言していなかったか、1人1人の様子をよくみてそれに対応することにより、1人1人の把握状況や良さがわかる。これは英語だけでなく、他の教科の場合でも必要なことだと思った。

Yasuyuki

(大学1年生で、この授業はまだ履修できないが、希望して参加)

何も知識がない中で参加させてもらったが、小学生における英語教育があまりにも活発に行われている事に驚きました。自分の時代には考えられなかったし、こんなに身近で、しかもしっかりとしたカリキュラムの中で行われていたのですごいと思いました。

また小学生相手ということもあって普通の授業を行うだけではだめだということに気がつきました。初めて触れる英語に対して興味・関心を持ってもらえるよう先生方は大変苦労なさっていることが分かりました。限られた授業数の中で英語を教え、子供たちの理解を求めようとするのではなく、その授業を他の授業と関連付けそれに付随させる形での英語教育が効果あると分かりました。そしてその中で重要となるのが子供の見取りであって英語の授業の中では一人ひとりの子供たちを活かす絶好の機会であることが分かりました。

こういった小学生の英語の授業ではそれぞれの子供が個々の興味関心を思う存分発揮させることができる場となりそのために教師は、教材の準備や教室のセッティングなど先生の方も何かと大変だと思った。

小学校での英語の授業は、自分が今まで中・高と受けていた授業とはガラリと形が変わり生徒主体の授業が求められると思った。そういった授業内容を教師個人が工夫し子供たちと一緒になって授業を作り上げることが大切であり、理解を求めることは二の次だと感じた。話の例にもあったように、ハンバーガーショップや英語劇を作り上げる過程の中で英語と触れ、慣れ親しんでもらうことが大切なのではないかと思った。







Atsushi

(大学1年生で、この授業はまだ履修できないが、希望して参加)

現在玉川学園小学部では、新K−12システムの英語教育目標をRISE&SHINEカリキュラム作成委員会で作成していると聞きました。

また、現在の英語の授業のカリキュラムや、その授業内容など、詳しい話も聞け、どのように英語を使い子供たちに接するか?という事についても新しい発見がいくつもありました。例えば、「英語」ということを特に意識せず、子供たちと一緒に遊んでいる。という感覚で授業をするなど、大変新しい発見がありました。

そして、一番驚いたことは、現在の学校教育におけるインターネットの活用方法でした。現在、インターネットなどで、授業の復習などもでき、また、先生が自分の声で録音しておいた音声なども聞ける。ということでした。


小川先生のお話を聞いていて、先生方の子供に対する愛情や、熱意がとても感じられました。これらの新しいシステムなども、すべて生徒がより勉強がしやすいように、より学校生活を過ごしやすいようにと考え続けた末のものなんだと思いました。

また、自分も将来教育者を目指しているので小川先生のような教師になりたいとも思いました。

一つ、小川先生の言葉でとても心に残った言葉がありました。それは、「小学校の英語教育では、英語の上達を目指すよりも心に刻まれるような英語教育をする。」というものでした。この話を聞いた時、「はっ」としました。自分も小学校の時に英語スクールに通っていて、そのときの英語の授業の事が心に刻まれていて今でもしっかりと覚えていました。そしてやはり、このような子供たちの心に刻まれるような授業をしたい!と思いました。

小川先生、貴重なお話、そして色々な資料を本当にありがとうございました。