Guest Speaker

2004年秋学期に開講している「総合英語1B」に、幼稚部と小学部で教えていらっしゃるスカイ先生をゲストにお招きしました。スカイ先生が英語コミュニケーションで話された内容と、小学部の英語授業などについては各報告(報告1報告2報告3報告4報告5)を参考にしてください。オーストラリアのイマージョン・プログラムやスカイ先生が先日視察に行かれた静岡県のK学園のイマージョン・プログラムなどを例にしながら、"Early Language Development & Cultural Identity"をテーマにDiscussionをしました。

 

当日の内容

Early English exposure in English vs. Japanese only

英語の早期導入については賛否両論あります。日本語(母国語)が身についていない時期に外国語にさらすということは、母国語の習得や文化の習得にマイナスに働くのではないかという学者もいる一方、外国語に触れる環境があるということは、むしろ子供達の言語能力を高めるし、母国語習得の妨げなどにはならないというスタンスの学者もいます。(補足:バイリンガル教育が盛んなアメリカのカリフォルニアでも賛否両論です。)

今回は、スカイ先生からEarly English exposure in English vs. Japanese onlyの両方の意見のポイントを紹介していただき、そのお話をもとに、学生達はディスカッションしました。学生は、自分の考えとその根拠となる例などをあげながら、考察を深めていきます。スカイ先生は、「正しい/間違っている」という答の出ないトッピックなので、自分の意見が間違っていると思って遠慮する必要は全くないと励ましてくださいながら、学生達の意見を引き出していってくださいました。大切なのは、自分がどういう意見も持ち、その意見に行き着いた根拠がどこにあるのか考えていくことです。(補足:きちんとした根拠でサポートしていくことが、自分の意見を論理的に展開していくポイントです。)それが、英語で言うCritical Thinking Skillでもあります。

多くの学生から出てきた意見は「英語の早期教育が良いかvs. 悪いかというよりも、その英語がどういう形で導入されるかの方が時期よりも大切ではないか?」という意見に集約されていきました。「英語の導入が早い→英語を好きになる→英語が使えるようになる」と考えるよりも、英語がどのように導入され、英語を学ぶスタイルと評価がきちんと一致しているのかどうかの方が大切ではないのか?という意見もあがりました。日本は、移民で構成されているアメリカやオーストラリアとは異なる環境であるという意見も出ましたが、「日本の中にもマイノリティはたくさんいる。在日韓国・朝鮮人の方々、日系ブラジル人の方々、帰国子女、ダブルと言われる国際結婚の子供達など、日本人が多様になっていることも考えた上で英語教育も考えていかなくてはいけないのではないか?」という意見も出ました。確かに英語の置かれている立場は、日本とアメリカ、オーストラリアでは異なります。日本のようにエリート(受験や仕事で有利)になっていくために位置付けられている(試験という形で随所に現れる)英語と、生きていくための英語(安全に搾取されないように生きていくための第一歩としての英語)では、英語の置かれている環境も違います。また、英語の学習者が、マジョリティの人々なのか、マイノリティとして学ぶのかによっても異なります。このようなディスカッションを深めていくうちに、だんだんと「英語だけでいいのだろうか?」という意見が出てきました。それに対して、「では、英語以外に学ぶとしたら、何語を選ぶか?」という質問をスカイ先生からいただきました。

 

What language do you choose except English?

この質問に対しては、Chinese, Korean がまずあがりました。その理由に、世界のビジネスを握っている華僑の力、また中国におけるマーケットを考えるとビジネスの上では中国語は不可欠とする意見、隣の国であり、様々な過去の歴史を持っている韓国だから、また在日の人口も非常に多いので、日本にいるマイノリティを理解する上でも大切だからという意見も出ました。「どういう目的を持つかによって、選ぶ言葉も変わるのではないか?」という意見も出て、ビジネスなどの経済的な目的を取るのか、それとも友好関係をつくりたいと思っているのかによっても選び方が変わる。アジアということを意識すれば、アジアの言葉も大切であるが、どこか1つを選ぶのはとても難しい。そうなると、同じアジア人同士がコミュニケーションをとって友好を深めていくにも、共通語として英語が便利なのかもしれない...と、議論は英語に戻ってきました。ただし、英語を使えるから友好が深まるのではなく、英語を道具として何を伝えるのか、どんな風に伝えるのかが重要になってくる。そうなると、どんな目的で何をゴールに英語を導入し、学習していくのか?という大きなテーマに行き着きます。このようにして、50分という時間は、あっという間に過ぎ、「何のために英語を学ぶのか?」という質問は、それぞれの問題として持ち帰っていきました。

 

Thank you very much, Skye-sensei!