研究のキーワード
神経科学一般
睡眠
学習
記憶
脳波
シナプス可塑性
グリア細胞

どうやら人間は、眠っている間に記憶を整理しているようです。そのメカニズムの解明が、私たちの主な研究テーマとなります。とくに、陳述記憶(言葉で表現できる記憶)をターゲットとして、覚えときの脳の状態と、睡眠時に脳に記銘する情報の取捨選択との関係にフォーカスした研究を始めたところです。「睡眠と記憶の関係」は、いま非常にホットなテーマですが、記銘のしくみについてはあまり触れられていない部分であり、チャレンジングな研究だといえます。

具体的な実験としては…1.被験者にいくつかの英単語を提示し、それを、例えば「モノと生物」などのように分類させる。(意識して覚えさせるのではなく、別の作業をさせるのです)2.睡眠をとってもらい、その間の脳波を計測する。3.インシデンタルラーニング(偶発的な学習)によって、睡眠前に見た単語をどのくらい覚えているか検証する、というフェーズを通して、脳波解析などを行っています。現在の研究の基礎となっているのは、2006年までに行っていた、「MRIによる睡眠中の脳の観察」の研究成果です。このとき、睡眠中の記憶の整理と記銘には、前頭葉腹側部のあたりが重要なはたらきをしているらしいという結果が出ており、これをさらに細かく検証するために、様々な実験上の工夫を凝らしながら、実験を重ねています。

こういった研究の結果には「より効果的な学習方法」などのヒントが秘められている可能性があり、応用のひとつの可能性として、「教育」分野から期待が寄せられています。しかし、私個人の見解として、あまり早急に結果を求めるのは危険だと考えています。