海外留学と就職
~9か月間の留学の学びを振り返って~
- 文学部英語教育学科 留学成果報告
2022年度~2023年度留学
文学部英語教育学科では9ヶ月の留学が卒業要件になっています。留学は英語力運用能力の向上だけでなく、語彙力向上異文化間コミュニケーション能力、進路にも影響を与えることがこれまでも示されています。
【概要】
期 間:2022年8/9月~2023年6月
留学先:サセックス大学(イギリス)、ダブリンシティ大学(アイルランド)、リムリック大学(アイルランド)
ハワイ大学マノア校(アメリカ)、オレゴン大学(アメリカ)以上3か国5大学
人 数:69名
【報告内容】
- IELTSに見られる英語運用能力の変化を事前事後の平均点で示します。
- 価値観、異文化適応性、世界観等、学生の内面的な変化を可視化する心理テスト(BEVI)を留学前と留学後の2回実施した結果からわかる留学の成果を示します。
- 学生の次の進路に向けて留学はどのような影響をもたらしたのか、各留学先大学から一人ずつ、話してもらったことをまとめたものを示します。
1.IELTSに見られる留学前後の英語運用能力の変化
IELTSの変化では事前事後を見るため、両方のテストを受験した66名のデータを用いています。表1は1年次末の結果(青字)と帰国後の3年生7月の結果(赤)を示しています。1年次末時点のピークが4.5だったのが3年次には5.5になり、全体的に上昇したことが示されました。この5.5を実用英語技能検定と比べると準1級~1級程度にあたります(表2)。また留学後は準1級以上の層が増えていることも分かり、英語力が全体的に上昇したことが示されました。
表1 留学前後のIELTSスコアの結果
表2 文科省作成、各資格・検定試験と CEFR の換算表
出典:文部科学省 (2021) 大学入試のあり方に関する検討会議 (第27回) 参考資料2-2
https://www.mext.go.jp/content/20210621-mxt_daigakuc02-000016052_5.pdf (参照 2024-7-18)
2.BEVI-jテストの結果が示す学生の内面的変化
BEVI(Beliefs, Events, and Values Inventory)は米国心理学者グループにより開発された心理テストで、個人では認識が難しい信念、価値観、異文化適応性、世界観等、7領域17尺(表3参照)から測定するものです。留学前と終了後の2回、BEVIの日本語版テスト(BEVI-j)を受検してもらい、回答者56名の留学前後のスコア(100点満点)の差を見たところ、全体的に「世界の理解・アクセス」の領域にある「グローバルとの共鳴」の尺度に肯定的な有意差(5点以上)が認められました。この尺度は、文化的・社会的背景の異なる人々との出会いを望み、グローバルな機会に関わろうとする意欲の程度を示すものです。異文化への理解は日本でも知識の習得等で一定の向上は見込まれますが、世界と関わることへの意欲は、留学を通した異文化経験を積むことで向上します。留学をしない他学科の学生に対して同じく2回のBEVI-jテストを実施したところ、英語教育学科生のスコア(46→52)と比べ、他学科生のスコア(28→32)は低く、有意差はありませんでした(表4参照)。
また、その他の領域・尺度においても、留学先毎に見ると肯定的な有意差が見られました。ハワイ大学は「批判的思考」の領域、ダブリンシティ大学は「自己の理解・アクセス」、サセックス大学はこれらの領域に加え「不均衡の許容」と「他者の理解・アクセス」において肯定的な有意差が見られました。このように、留学は領域横断的・総合的な成長をもたらす経験となることがわかります。
表3 BEVIが測定する7領域17尺度
表4 英語教育学科と留学のない学科の学生のBEVI-jスコアの比較
3. 「留学経験と私の成長」
2,3年次に長期海外留学を経験し、卒業後の進路に向けて活動してきた4年生に、留学が自分の成長にどのように影響したかなどについて聞いてみました。
石塚 一花さん(英語教育学科 英語教員養成コース4年)*ダブリン・シティー大学(アイルランド)へ留学

- 留学でどのようなスキルや意識が身についたと思いますか?
- リスニング力はもちろんですが、大学での授業でライティング力が特に高まったと感じます。語彙や表現の知識も増えたと思います。また、自分自身の在り方や価値観を大切にしているヨーロッパの人々と接するなかで、文化の違いだけでなく個々の多様性を認め合うことの大切さを学びました。
- 留学はあなたの進路・進路選択にどのような影響を与えたと思いますか?
- 高校のころから英語教師を目指してきたので、必須である英語運用能力を伸ばすことを第一の目標に留学生活を送りました。また、アイルランドの英語に触れたことで感じた英語の多様性についても、生徒に伝えていきたいと思いました。
- 留学で一番楽しかったこと、よかったことは何ですか?
- 多文化に寛容なダブリンという街で過ごして、ヨーロッパ諸国の文化や独自の言語観を、実際に体感できたことがよかったと思います。また、他国へのアクセスのよさを活用して、ヨーロッパの国々を訪れたことも楽しい経験でした。
金本 有治さん(英語教育学科 英語教員養成コース4年)*サセックス大学(英国)へ留学

- 留学でどのようなスキルや意識が身についたと思いますか?
- 一番にチャレンジ精神を養うことができたと感じています。日本語が通用しない環境に身を置くことで、新しいことに挑戦することの大切さ、それを実行することの大変さ、楽しさを実感しました。また、異なる文化や背景をもつ人たちと会話することで、新しい世界を発見することができました。
- 留学はあなたの進路・進路選択にどのような影響を与えたと思いますか?
- 直接的な影響というのは見えづらいのですが、留学を経験したことで、より広い視野で今後の将来像について考えられたと感じています。私は以前から教育に興味があり、学校法人に就職予定ですが、学生の支援などに自分の経験が生かせれば幸いに思います。
- 留学で一番楽しかったこと、よかったことは何ですか?
- 9ヶ月間の全てが楽しかったです。学習面から生活面まで、あらゆることが刺激的でした。そのなかでも、海外の人と交流したり、有名な建造物や観光地を訪れたりしたことは一生の思い出です。日本ではできないことを、数多く経験することができたと思います。
桑山 恵介さん(英語教育学科 英語教員養成コース4年)*リムリック大学(アイルランド)へ留学

- 留学でどのようなスキルや意識が身についたと思いますか?
- とにかく受け身の姿勢では留学という貴重な時間を無駄にしてしまうと考え、現地で出会った人と積極的にコミュニケーションをとったり、目的意識を持って日々の講義に参加したりすることで、主体的に物事に取り組む癖がついたように思います。
- 留学はあなたの進路・進路選択にどのような影響を与えたと思いますか?
- 留学が与えてくれた新鮮な感動をどんな形であれ一人でも多くの生徒に味わってほしい、英語を介した異文化交流の素晴らしさを伝えたい、という思いが日に日に強くなっていきました。そして、英語教師になりたいという留学前からの目標がより確固たるものになりました。
- 留学で一番楽しかったこと、よかったことは何ですか?
- 多種多様な文化圏の人々と交流するなかで、日本にいただけでは得ることができなかったであろう、様々な気づきを日々得られたことが、楽しかったことでもあり、よかったことでもあります。
玉谷 双葉さん(英語教育学科 英語教員養成コース4年)*オレゴン大学(米国)へ留学

- 留学でどのようなスキルや意識が身についたと思いますか?
- 深く考え過ぎず、積極的に行動するという意識が身についたと思います。海外旅行に一人で行く自信もつきました。また、模擬授業などで英語を話すことがまったく辛くなくなりました。
- 留学はあなたの進路・進路選択にどのような影響を与えたと思いますか?
- 英語に自信がついたことや、様々な人や文化に触れて視野を広げることができたことから、人と関わる教職以外の仕事に目を向けたり、もっと直接的に英語を使う仕事をしたいと考えたりするようになり、進路選択の幅が広がりました。
- 留学で一番楽しかったこと、よかったことは何ですか?
- アメリカという一つの外国で生活しながら、様々な国から来た学生たちと出会い、彼らの様々な文化に触れることができたのがよかったと思います。知らず知らずのうちに、多様性に対する自分自身の理解が深まりキャパシティーが広がったように感じます。
永井 優羽さん(英語教育学科 英語教員養成コース4年)*ハワイ大学マノア校(米国)へ留学

- 留学でどのようなスキルや意識が身についたと思いますか?
- 最も伸びたと感じるスキルは、スピーキングです。留学前は英語を話すことが恥ずかしかったのですが、留学で自信がつき、話すことが楽しいと感じるようになりました。また、何事にも努力することが大切であると考えるようになりました。友人からは「明るくなったね」と言われます。
- 留学はあなたの進路・進路選択にどのような影響を与えたと思いますか?
- 私は、留学中に現地のドレスショップでのインターンシップを経験しました。ドレスを身にまとい、幸せそうな花嫁の姿を見て、人の幸せに寄り添う職業につきたいと考えるようになりました。そして、この経験をきっかけに、卒業後はブライダル関係の企業に就職するつもりです。
- 留学で一番楽しかったこと、よかったことは何ですか?
- 一番印象に残っているのはやはりインターンシップです。留学前から参加したいと思っていたインターンシップは、とても貴重な経験になりました。また、個性豊かで、いつも前向きな言葉をかけてくれた素敵な先生方に恵まれたことも、本当によかったと思います。