ゼミガイド

英語教育学科リーフレット

海外留学と就職

~9か月間の留学の学びを振り返って~

文学部英語教育学科では9ヶ月の留学が卒業要件になっています。留学は英語力運用能力の向上だけでなく、語彙力向上(日䑓・松本・浅賀, 2021)異文化間コミュニケーション能力、進路にも影響を与えることがこれまでも示されています(松本・髙城・中嶋・鈴木, 2023)。ここでは2023年度~2024年度の9か月間留学の成果について報告します。

【概要】
期 間:2023年8/9月~2024年6月
留学先:サセックス大学(イギリス)、ダブリンシティ大学(アイルランド)、リムリック大学(アイルランド)
    ハワイ大学マノア校(アメリカ)、オレゴン大学(アメリカ)以上3か国5大学
人 数:83名

【報告内容】

  1. IELTSに見られる英語運用能力の変化:事前事後の平均点で示します。
  2. 価値観、異文化適応性、世界観等、学生の内面的な変化:これらを可視化する心理テスト(BEVI)を留学前と留学後の2回実施した結果からわかる留学の成果を示します。
  3. 満足度調査結果:アンケート結果をお示しします。
  4. 学生たちの声:学生の次の進路に向けて留学はどのような影響をもたらしたのか、各留学先大学から一人ずつ、話してもらったことをまとめたものを示します。

1.IELTSに見られる留学前後の英語運用能力の変化

IELTSの変化では事前事後を見るため、両方のテストを受験した83名のデータを用いています。表1は1年次末の結果(青字)と帰国後の3年生7月の結果(オレンジ)を示しています。1年次末時点の平均が4.80でしたが3年次には5.53になり、全体的に上昇したことが示されました。この5.5を実用英語技能検定と比べると準1級~1級程度にあたります(表2)。また準1級以上の層が留学前は12名でしたが留学後は64名となり、英語力が全体的に上昇したことが示されました。

表1 留学前後のIELTSスコアの結果

表2 各資格・検定試験とCEFRの換算表

出典:文部科学省 (2021) 大学入試のあり方に関する検討会議 (第27回) 参考資料2-2
https://www.mext.go.jp/content/20210621-mxt_daigakuc02-000016052_5.pdf (参照 2024-7-18)

2.BEVI-jテストの結果が示す学生の内面的変化

BEVI(Beliefs, Events, and Values Inventory)は米国心理学者グループにより開発された心理テストで、個人では認識が難しい信念、価値観、異文化適応性、世界観等、7領域17尺(表3参照)から測定するものです。留学前と終了後の2回、BEVIの日本語版テスト(BEVI-j)を受検してもらい、回答者70名の留学前後のスコア(100点満点)の平均値を見たところ、「Ⅶ.世界の理解・アクセス」領域にある尺度「17.グローバルとの共鳴」のスコアが41→46と肯定的に有意(5点以上)に変化しました。この尺度は、文化的・社会的背景の異なる人々との出会いを望み、グローバルな機会に関わろうとする意欲の程度を示すものです。異文化への理解は日本でも知識の習得等で一定の向上は見込まれますが、世界と関わることへの意欲は、留学を通した異文化経験を積むことで向上します。昨年度留学した学生に対して留学前後に実施した同テストにおいても肯定的な変化(46→52)があり、留学しない他学科のテスト結果(28→32で有意差なし)と比較すると、その差が明らかであることがわかります(表4参照)。

また、5つの留学先毎に平均値を見ると、「V.自己の理解・アクセス」領域にある尺度「12.意味の探求」と「11.自己認識」および、より深層領域の「II.中核的欲求の充足」にある尺度「4.アイデンティティの拡散」において、複数の留学先で肯定的な有意差が認められました。これらの変化は、留学中の様々な異文化体験を通して、積極的に人生の意味や目的を見出そうとする姿勢が強まり、また経験の内省により自己理解が高まったことが要因であると解釈できます。さらに、目標設定や意思決定を行うことで、自己のアイデンティティがより確立された可能性を示しています。実際に、留学を経て卒業後の進路が明確になる学生は少なくありません。このように、留学は国際性の涵養にとどまらず、領域横断的・総合的な成長をもたらす機会であることがわかります。

表3 BEVIが測定する7領域17尺度

表4 英語教育学科と留学のない学科の学生のBEVI-jスコアの比較

3.満足度調査結果

学生たちに留学について様々な視点から、5段階で満足度を答えてもらいました。右端が100%です。いずれの質問項目も概ね評価は高く、留学に興味がある高校生に、本プログラムを勧めたいと思う学生は95%にのぼりました。

(1)プログラムや滞在先について


(2)留学を通して英語の運用能力が期待どおりに向上したか


(3)留学を通して以下の能力が期待どおりに向上したか


(4)留学を通して以下の意識や関心が高まったと思うか


(5)今回参加した留学プログラムを留学に関心のある高校生に勧めたいと思うか

4.留学経験と私の成長

2年次後半~3年次前半に長期海外留学を経験し、卒業後の進路に向けて活動してきた3年生に、留学が自分の成長にどのように影響したかなどについて聞いてみました。

遠藤 芽衣さん(英語教育学科 ELFコミュニケーションコース3年)*サセックス大学(英国)へ留学

留学でどのようなスキルや意識が身についたと思いますか?
インターナショナルクラスでの授業やホームステイでの生活をしてみて、自分の思ったこと考えたことを人に話すということが、積極的にできるようになったと思います。
留学はあなたの進路・進路選択にどのような影響を与えたと思いますか?
私のホストファミリーやクラスの先生の働き方を聞いて、色々な働き方があるというのを感じました。例えば裁縫が好きなホストマザーはカーテンを作る仕事をしているなど、好きなことをそのまま仕事にしている人が多く、また自分の時間を作るために毎日は働かないと自分で決めるなど、仕事にとらわれない生活をしたいという考え方の人が多いと感じました。もちろんしっかり働く必要はあると思いますが、自分がやりたいことや、続けられることを考えたいと、留学に行って思いました。
留学で一番楽しかったこと、よかったことは何ですか?
日本とは遠く離れた所にある国々からイギリスに来て、文化も宗教も異なる人と、普通に友達として仲良くなれたことや、ヨーロッパ各国に行き、様々な人や文化など、日本と異なるものをたくさん見ることができたのがとても楽しかったです。

岡田 歩美さん(英語教育学科 ELFコミュニケーションコース3年)*ダブリンシティー大学(アイルランド)へ留学

留学でどのようなスキルや意識が身についたと思いますか?
ダブリンは多国籍の人で溢れており、多種多様なバックグラウンドを持つ人々と関わる機会がありました。この経験により、自分にはない考え方や価値観に出会い、それらを受け入れる姿勢を持つようになりました。また全ての人に対して「リスペクトの精神」を持つことが、平和な関係を築くうえでいかに大切であるかを学びました。
留学はあなたの進路・進路選択にどのような影響を与えたと思いますか?
英語の能力だけでなく、多様な人とのコミュニケーションスキルも身につけることができたと考えています。そのため、海外で働くという選択肢も、より自分を成長させる良い経験になるのではないかと考えました。この留学で、日本と異なる海外の働き方に魅力を感じ、自分に合った働き方について改めて考えさせられました。
留学で一番楽しかったこと、よかったことは何ですか?
アイルランド国内はもちろん、ヨーロッパ各国を旅して、それぞれの国の文化や人、歴史に触れることができました。ヨーロッパの街は非常に趣があり、その国によって異なる街の雰囲気や建築物を見られるのが楽しかったです。

神戸 康太さん(英語教育学科 英語教員養成コース3年)*リムリック大学(アイルランド)へ留学

留学でどのようなスキルや意識が身についたと思いますか?
スピーキング力が一番伸びたスキルだと思います。私は大学1・2年生の英語の授業では、人前で英語を使うことが好きではなく、あまり発言をしていませんでした。しかし留学では、この状態はだめだと思い、積極的に英語を使いました。その結果、英語を話すことに自信がつき、英語を使ってコミュニケーションを取ることが楽しいと思うようになりました。
留学はあなたの進路・進路選択にどのような影響を与えたと思いますか?
私は高校生の時から、英語教員になりたいと思っていました。留学先での通常授業の先生方の授業方法、留学先で受けた教職の授業を通して、自分が留学で経験した教授法を使用して、中高生に英語を教えたいという気持ちが非常に強くなりました。英語を教えるだけの英語教員ではなく、英語の楽しさや様々な文化・考え方を伝え、世界へ羽ばたいていく人材を育成したいです。
留学で一番楽しかったこと、よかったことは何ですか?
一番良かったことは、様々な国の人々と交流ができたということです。私のホームステイ先ではルームメイトの入れ替わりが多く、ルームメイトの友達とも会って会話を楽しんでいたため、11ヶ国15人以上の方と交流をしていました。様々な文化や言語に触れることで、多視点から物事を捉えることができるようになり、自分の人生経験や考え方の礎となりました。

小林 丈輝さん(英語教育学科 英語教員養成コース3年)*ハワイ大学マノア校(米国)へ留学

留学でどのようなスキルや意識が身についたと思いますか?
大きく分けて3つあります。一つ目は英語力です。授業も日常生活もインターンシップも英語のみでの生活で、新たに知った英単語は常にメモをとり覚えるよう努めていました。やがて、日本語を考えることなく英語で話せるようになりました。二つ目は性格が明るくなったことです。留学前は比較的大人しく、インドアな性格でしたが、留学中は授業で気楽に発言し、英語でのグループワークも積極的に行い、ビーチバレーやジムでの筋トレも頻繁に行うようになり、アウトドアな性格になりました。三つめは、異文化理解の意識が高まったことです。インターンシップ中に、職場の方々が立場を超えて気軽に会話するのを聞いたり、多くのホームレスの人たちを見たり、同性婚のルームメイトに会ったりしたことなどから、視野が広がったと思います。これらをカルチャーショックで済ませるのではなく、しっかりと理解し、誤った反応をしないよう心がけようという意識を持つことができました。
留学はあなたの進路・進路選択にどのような影響を与えたと思いますか?
将来は教職に就くことのみを考えていましたが、実際に観光バスの会社でインターンシップを行ったことや海外で働く人の楽しそうな表情を見てから、教職以外の将来や海外で働くことも視野に入れるようになりました。
留学で一番楽しかったこと、よかったことは何ですか?
やはり、明るい性格になれたことです。英語力向上もよかったことですが、現地の人は明るい方ばかりで、授業もホームステイもインターンシップも、楽しく明るい雰囲気の中で経験することができました。

安本 ななみさん(英語教育学科 英語教員養成コース3年)*オレゴン大学(米国)へ留学

留学でどのようなスキルや意識が身についたと思いますか?
留学で身についた力は主に二つあります。一つ目は英語力です。到着した日のホストマザーとの会話で、言っていることがわからなかったり、言いたいことが伝えられなかったりしてとても悔しかったことを覚えています。しかし、日常生活の会話や授業、毎日英語で書いていた日記などにより、英語力が向上したと感じています。二つ目は自己主張の意識です。日本のように、察したり、周りに合わせたりするのではなく、自分から進んで主張をする文化であるため、些細なことであっても伝えるということを意識するようになりました。そうすることで、周りの人たちにもよい影響を与えたり、受け容れてもらえたりするのだということを学びました。
留学はあなたの進路・進路選択にどのような影響を与えたと思いますか?
たくさんのよい影響を与えてくれたと感じています。留学前から英語を使う楽しさや、人に教えることの楽しさ・やりがいは感じていましたが、留学での生活・インターンシップ経験を通して、さらに将来の選択肢を増やすことができたからです。私は教師になるために玉川大学へ入学しましたが、9ヶ月間の留学を経て、もっと自分の可能性を広げたいと考えるようになりました。教師になるという夢は抱き続けながらも、生徒の将来を親身になって考えたり、保護者に寄り添ったりすることができるようになるためにも、一度社会に出てみようと思うようになりました。
留学で一番楽しかったこと、よかったことは何ですか?
一番よかったことは、アメリカ人の友達ができ、玉川大学の友人とともに仲良くなれたことです。一番仲良くなれたアメリカ人は、私たちが着いて間もない頃にオリエンテーションを行ってくれた先生だったのですが、日本語を学んでいて、ジムに通っているなど、共通の話題が多いことから仲良くなりました。彼の家でパーティをしたことなども、忘れられない思い出になりました。

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