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研究紹介

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小田 眞幸教授

研究キーワード
コミュニケーション、言語政策、マスメディア、言語学習観

私の研究領域は「応用言語学」です。「応用言語学」と聞いても何のことかピンと来ない人が殆どだとおもいますが、一言でいえば「様々な学問領域の知見を利用して、言語、コミュニケーションに関する問題を解決する」学問です。私が文学部英語教育学科に所属している関係で「解決すべき問題」は英語教育に関するものが中心と思われがちですが、応用言語学がカバーする範囲は「英語」「教育」に限られるものではありません。また応用言語学にも様々なアプローチがありますが、私は特に批判(的)応用言語学 Critical Applied Linguistics、すなわち「言語、コミュニケーションにおいて常識と考えられていることの再検証」に興味を持っています。

いくつか身近な例を上げたいと思います。同じ日本語でも地域によって多様なアクセント、言い回し、意味が存在します。毎年全国から新入生が入学してきますが、自己紹介で「私は〇〇県から来ました、ことばが訛っていますがよろしくお願いします。」という人がいます。「訛っている」って、いったい何が基準なのでしょうか。東京や関東地方の日本語は「訛っていない」正しい日本語なのでしょうか。これは英語についても言えることです。これまで日本における英語教育では、主としてアメリカやイギリスで使われている英語が「正しい」英語とされ、こういった英語を話す、いわゆるネイティブ・スピーカーが重宝され、彼らの使う英語が学修の目標とされてきました。英語が世界の共通語として使われている今日、ネイティブ・スピーカーは実際に英語を使う人の約2割から3割に過ぎませんが、なぜネイティブ・スピーカーの英語にこだわる人が多いのでしょうか。

さて英語の学修ですが、日本の学校では中学、高等学校でずっと英語を学んできた人が殆どだと思います。また最近は小学校で英語が教えられるようにもなりました。多くの人にとっては「英語」は中学校、高等学校で必ず学ぶものというイメージがあるのではないかと思います。さらに最近は小学校5・6年生から教科として学ぶことも始まりました。しかし、ちょっと待ってください。学習指導要領をよく読んでみると、日本の児童、生徒が学ばなければならないのは「英語」を含む「外国語」なのです。ではなぜ「英語」一辺倒なのでしょうか。

言語やコミュニケーションについて、こういった一見「当たり前」と思われていて、疑問にさえならないものについても、実際よく調べてみると「あれ、本当はどうなの?」と考えざるを得なくなることが驚くほどたくさんあることに気が付きます。上の2つの例のうち1つ目は言語そのものの構造とそれに対する人々の態度の問題、一方2つ目は教育政策の問題ですが、ともに応用言語学が解決すべく問題であると思います。

高校までの英語を含む外国語の授業は「言語を使う」という目標があったとしても、多くの場合言語の構造を理解することが中心になっていたと思います。これはもちろん重要なことですが、政治、経済、社会、文化、科学技術など様々な分野について知識があるほど外国語の学修の効果が上がります。すべての分野に精通せよと言っているのではありません、しかし、外国語が理解できなかったり、通じなかったりする原因が必ずしも自分の言語についての知識不足だけではなく、コミュニケーションに必要な背景の知識が不足していることであることが少なくはありません。私自身が英語の授業を行う際も、こういった観点から英語だけではなく日本語の新聞、雑誌、書籍あるいはテレビやラジオなど複数のソースから情報を収集しておくことを推奨しています。

英語教育学科に入学する皆さんは英語を通して自らの「世界」を広げ、さらに教員志望の場合、その魅力を生徒に伝えるという夢を描いていることと思います。しかし、それを実現するためには、皆さんがこれまでに学修してきたこと、体験してきたこと、成功したこと、失敗したことをつねに振り返り、この先に遭遇する様々な問題の解決にいかに役立てるかが鍵となります。応用言語学は振りかえりと気づきからはじまる学問だと言えるでしょう。

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