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研究紹介

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丹治 めぐみ教授

研究キーワード
アメリカ文学、小説、女性像、地域研究、アン・タイラー

アメリカ文学の世界へ

英語英米文学を専門とする学科で学んだ大学時代、何を専攻するかを意識する時期がきました。イギリス文学か?アメリカ文学か?それとも、英語という言語そのものを研究対象とする英語学か? 

辞書をひいて英語を読むこと、そして物語を読むことが好きだったので、自然に文学を学びたいという思いをもち、さらにいくつかのきっかけがあってアメリカに関心を向けました。学生時代に抱いた問題意識は、その後の研究に続いています。

ひとつは、話しことばの文学の伝統。19世紀アメリカの作家マーク・トウェインは、代表作『ハックルベリー・フィンの冒険』で主人公の少年にふつうの日常生活のことばで語らせました。知識も教養もないので、文法的なまちがいがあるし、気のきいた慣用句などは使えません。その分、自分の見たまま、感じたままを、自分にしかできない表現で語るこの作品を大学の授業で知り、すぐに読みたい!と思って原書を入手しました。ところが、あっさり挫折。整った英語しか読んだことがなかったためか、歯がたちませんでした。でも、アメリカ的な題材をアメリカ的な言語で語る作品に出合ったことで、アメリカ文学をもっと知りたいと思うようになりました。

もうひとつは、文学作品にみられる、さまざまな女性のイメージ。職業を持ちながら家庭生活もできるだろうか、ということをずっと考えていた学生時代、19世紀以降のアメリカ女性作家たちが書いた多くの作品が注目されるようになっていて、同じような問いと悩みが描かれていることを知りました。自分にとって最も身近で切実な問題に、100年前の、異なる文化に生きていた多くの女性がぶつかっていた!どうやって壁を越えたり、越えられなかったりしたのかを作品から読み取ることに、夢中になりました。

「地域研究」の視点

Area studiesは、ある地域の歴史・文化・社会制度などを学際的に(学問の領域を超えるようにして)とらえ、その地域の個性を明らかにしようとするものです。

アメリカ文学について考えるときに、このような「地域研究」の視点をもつことが助けになります。歴史と文化的伝統の長さでは、アメリカはヨーロッパにかないません。しかし、17世紀から始まったヨーロッパ人による植民地建設、18世紀に達成した独立、19世紀に国土も人口も増大、と変化していくにつれて、ヨーロッパとは異なるアメリカの文化・文芸を作り出そうとする機運が高まっていきました。「英米」とか「欧米」といったくくり方をしますが、アメリカの文化や文学の「アメリカらしさ」とはいったい何だろう?という問いが生まれます。作品を読みながら、常にこの問いを念頭に置いています。

アメリカは、直接・間接に私たちが生きる社会や文化に影響を及ぼす存在です。近年は、分裂と格差の拡大という観点からアメリカを見ることが多い傾向にありますが、それも含めて、いったい何がアメリカをアメリカらしくしているのかを考えることは、自分が生きる社会や文化の現在とこれからについて考えることにつながります。

研究対象の作家 Anne Tyler

アン・タイラー(1941~)はその作品がさまざまな言語に翻訳されており、日本語でも10作以上が出版されている、現代アメリカを代表する作家の一人です。第1作の発表が1964年、最新作は2022年。この間一貫して、家族の関係のなかに人物を置いていることが特徴です。タイラーの作品は、特定の時代や地域を超えて、家族というものがもつ普遍性を意識させます。だからこそ、多くの国で読者を得ているのでしょう。

タイラー作品はその時代のアメリカ社会を描いていないとして、批判を受けることがあります。人は社会と無関係に存在することはありません。タイラーは本当に社会を描いていないのか、描いているとしたらどのような描き方になっているのか。このような視点も持ちながら、作品研究に取り組んでいます。

文学探究の面白さ

なぜ小説を書くのか、という問いに対して、アン・タイラーは”I write because I want more than one life.”と答えました。文学作品の書き手だけでなく、読み手についても同じことが言えるのではないでしょうか。まさに、文学の世界を探究する面白さを言い表したことばだと思います。

もちろん、研究には冷静な批判的態度が必要です。でも、根底に「面白い、もっと読みたい」という気持ち、あるいはmore than one lifeを求める好奇心があって、それが原動力になることも確かです。

文学探究の面白さをどのように英語教育に結びつけていけるか、ということも、今後の研究課題と考えています。

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