ゼミガイド

研究紹介

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米田 佐紀子教授

研究キーワード
小学校英語、教員養成、ポートフォリオ(J-POSTLエレメンタリー、中学校へのパスポート)、言語活動、COIL

小学校英語の役割と重要性

小学校英語というとどのようなイメージを抱かれるだろうか。歌?チャンツ?踊り?スマイル?小さい子どもたちが外国人の指導者と楽しく歌い、踊り、英語だけで指示に従い、活動を楽しんでいる様子を見ると、早期化が日本人の英語力を高めてくれる特効薬のように思える。一方、指導者については、小学校では「簡単なことしかしない」ので、指導者は英語力も英語指導の知識やスキルが無くても大丈夫という声も聞こえてくる。本当にそうなのだろうか。

2020年度から小学校の5、6年生で英語が教科化され、「外国語活動」が3、4年生で実施されることになった。これまで中高の6年間だった英語教育が10年間になり、その4年間を小学校英語教育が担う。教科化と長期化だけでなく、語彙数や文型も明示され、明確な到達点が共有された。以前より学習内容の質・量とも増え、専門性が鮮明になった。とはいえ、小学校英語の語彙や文型は中高と比べれば格段に少ない。言い換えると、小学校の4年間は、限られた言語材料を楽しく身に付け、子どもたちが中学校に入って「小学校の時に教えてもらったことが役に立っている」と思ってもらえるような語学力や異文化・異言語とのコミュニケーションに前向きな態度を身に付ける重要な時期であり、その果たす役割は大きい。

英語教育学科の学生が小学校英語を学ぶ意義


ゼミでの模擬授業風景


授業参観のため近隣の小学校を訪問


コスモス祭:自作の英語クイズを子どもたちに出している様子

子どもが初めて英語に出会い、4年間で中学校につなげるための英語力や態度を身に付けさせるためには、専門性の高い指導が必要であり、こうした指導力を持つ人材の育成が急務になっている。この観点からすると、玉川大学の英語教育学科のカリキュラムは、現在求められる人材を育てる環境が整っていると考える。中高等学校の教員免許状(英語)で英語の指導者としての専門性を磨き、小学校免許状を取得することで子どもの発達段階を踏まえた、小学校教諭になるために必要な知識・技能を身に付けることができるシステムになっている。特徴は以下の3点である:

  • ①英語指導者に求められるCEFRのB1~B2以上の英語力がある。このことは小学校現場で必要とされるALTとの英語によるコミュニケーションに役立つだけでなく、子どもにとってロールモデルになる。
  • 英語科指導法の知識とスキルを持っている。小学校英語といえども、言語である以上、語彙・文法の知識は重要である。文法を明示的に指導できないからこそ、上手に提示したり、練習させたり、言語活動で定着させる指導力が求められる。
  • 異文化コミュニケーション力がある。留学を9か月間することで文化的背景の異なる人とのコミュニケーション能力を体験的に学んでいる。

これらの力は今小学校現場で必要な人材と言え、小中高どのレベルで教鞭を取るにしても、小学校英語を知ることは長期的視点を持った指導に重要な意味を持つ。

筆者は授業を理論と実践の両輪で進めることにより、実践力のある教員養成を実践研究としても行い、学生の指導力向上に努めている(写真はゼミでの模擬授業の様子)。

J-POSTLエレメンタリーを用いた教員養成

「省察する教師は成長する」と言われる。ヨーロッパで開発された、中高の英語指導者用の省察ツール(J-POSTL)を大学英語教育学会 教育問題研究会が日本の小学校英語現場に合うように開発したものである。指導者に必要な資質・能力をCan-Do形式で明示し、学生たち自身が必要な知識・技能を見つめ直し、成長につなげるために用いるツールである。必要な資質・能力を知り、友人同士、教員との協議が促され、より指導力の高い指導者を目指すことができる。2014年からこの研究に携わり実践を積み重ねてきた。2021年には小学校用J-POSTLエレメンタリーが完成し、今はそれを用いて教員養成に取り組んでいる。(この研究は科研費B19H01288「省察ツールとしてのポートフォリオの体系化と活用ガイドの開発」(研究代表者:神保 尚武)の一部である。)

児童用ポートフォリオ「中学校へのパスポート」

新しい学習指導要領では生涯学び続けられる自律した学習者を謳っている。大学英語教育学会 教育問題研究会では児童用のポートフォリオを開発中であるが、このパスポートは学習者ポートフォリオの一部であり、これにより子どもたちが英語や文化についての気づきや、英語学習について考えを深めたり、振り返ったりしながら、中学校までに身に付けたい知識・技能や態度等を身に付けられるよう工夫されている。今年度より現場の先生方と共に、また、教員養成課程でも使用し、効果的な用い方について研究している。(この研究は科研費B19H01288「省察ツールとしてのポートフォリオの体系化と活用ガイドの開発」(研究代表者:神保 尚武)の一部である。)

Collaborative Online International Learning (COIL)

玉川大学の国際教育センターが主催する活動の一部として、小学校英語指導者へのオンライン交流をアメリカのペンシルバニア州にあるWilkes Universityおよび地域の小学校とCOILを行っている。主なねらいは英語教師を目指す学生が(1)アメリカの大学の先生の講義を聞いて質疑応答をする機会を持つ(2)現地小学校の授業参観をして知見を広める、(3)国を超えた指導者および指導の在り方を知る、(4)文化を超えた子どもたちに触れ合う、(5)異文化交流に必要な事柄を体験的に学ぶことで、必要な知識・技能・態度を養うことである。学生たちは英語に苦戦したり、喜んでもらえたことに達成感を覚えたり、子どもたちからのペンシルバニアの地域のクイズに頭をひねったりしながら、新たな学びの機会を楽しんでいる。

言語材料と題材別言語活動一覧の作成

学習指導要領により小学校から高校まで、言語活動により児童・生徒の英語力をつけていくことが求められている。現場の面白く有意義な言語活動一覧が欲しいという声に応えるべく、言語形式による一覧を作成中である。(この研究は科研費(C)20K00843「小学校英語における行動中心アプローチに根差した言語材料と題材別言語活動一覧の作成」(研究代表者:米田佐紀子))

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