Guest Speaker

2008年秋学期に開講している「児童英語コミュニケーション」では、玉川学園低学年の英語科主任の小川先生による英語授業を、学生達は「子供になったつもりで」受けました。小川先生の豊富な経験と研究に基づいた実践について、実際の授業デモンストレーションを通して教えていただきました。1つ1つの活動には必ず目的があり、子供の「楽しい学び」は偶然生まれるものではなく、理論に裏付けされていること、その裏付けが子供達の学習の「安心感」につながることを学びました。玉川学園低学年の英語は、ただ「英語ができるようになる」ことだけを良しとせず、子供達が英語を使って社会貢献すること(困っている友達にヒントをあげたり、助けてあげようとする)を大切にしています。また、”Communication skill” を「ただ話せる、通じる英語力」と捉えず、子供達が「何かをShareできること、Shareすることで広がる関係や可能性」を授業の中で実感していけるように配慮されています。

*玉川学園低学年の英語教育については、過去の報告(報告1報告2報告3報告4報告5報告6報告7)、小川先生をゲストスピーカーにお迎えした授業12を参照(ただし、20062007年度は大谷の産休&育児休暇中のため、それ以前のものです)。

 

授業の内容

1. 挨拶の歌

2. Name Tag作成

3. New Wordsの確認 (Houses & Rooms)
Kitchen, living room, bathroom, bed room, hall, dining room, pool, etc. 
自分の理想の家/欲しい部屋(play room, Jacuzzi, library, etc.)や遊具(slide, swing, jungle gym, etc.)の名前を子供達が出していきます。

4. Dream Houseの見取り図の作成
色紙は、各色を1枚づつ取って各自で作業するのではなく、自分の”house”に必要な分だけを取って、使わない分は他の友達が使えるようにすることも、もう1つの隠れたリキュラムとしてあります。作業を通して、お互いに良い作品を作れるように、譲ったり、譲ってもらうことを経験していきます。先生は、「ぶつぶつ英語をいいながらでいいよ。」と、各部屋の名前を言いながら作業をすることを勧めます。

5. Dream Houseの発表
1人1人が、発表をするだけでなく、友達の発表も評価します。評価シートには、@声の大きさ、A発音、B態度に対して、Very Good, So-so, Not so good…の3段階の顔を子供達が描き、先生だけでなく、友達に評価してもらうことも大切にしています。子供の発表は、「○○君/さんらいしいよね!」と、思えるようなことがShareできると、子供達は次のコミュニケーションに自然とつなげていきます。

6. パワーポイントによる小川先生の講義「「児童と創る英語活動---表現力・発話力を伸ばすために」

7. Good-bye song

 

まとめ:


小学生の英語で、「きれいに書きなさい」とか、「書いて練習しなさい」といったようなことは言いません。子供のレディネスを考え、その発達段階でできることをさせます。したがって、小学生は「まず、言えればO.K」と子供をたくさん誉めてあげます。小学校の英語に決まっていることはないので、子供と一緒に授業を創っていくと、子供達から「学びたいこと」がどんどん出て来ます。その子供にとって必要な言葉を、「必要なその時に言える」ことが、言葉を自分のものにしていく上で大切です。子供は、自分の言いたいことが言えた時、したいことが出来た時に達成感と自信を実感します。ただし、やるからには、ユニバーサルであること、目標や主旨をきちんと皆に納得させることができるものある必要があります。「学校だからこそできること」「学校だからこそ学べること」を大切にし、英語を通して”Share”することを実践しています。

 

質疑応答:


Q. 教材研究に、どのくらい時間をかけられますか?

A. 1つのLessonにつき、4-5時間くらいはかけます。玉川は、英語の専科なので、この教材研究の時間が実現していますが、1年生から4年生まで(玉川は4-4-4制をとっているため、小学校にあたる「低学年」は4年生まで)の英語のすべてを、ネイティブの先生方と一緒につくっています。カリキュラムも何年も何年もかけて作ったものを、子供達との活動を通して更に改善していけるように教材研究をします。”Share”は、子供達だけに求めていることではなく、教員同士もお互いのアイディアなどをいつでもShareし、お互いにより良いものを創ろうとすることを大切にしています。

Q. 英語の授業をする上で心がけていらっしゃることは何ですか?

A. 子供と直接つながることです。CDなどを使うこともありますが、ただ聞かせるのではなく、「今、CDでは何て言っていた?」と子供達に質問することで、子供に働きかけをします。作業をしている時も、英語で”What is it?”などOpen-endな質問をし、子供に働きかけをします。子供は、言葉が自分に向かって発信されるものを受け取ろうと努力をします。ただ、聞こえてくるだけでは十分とは言えません。また、先生の持ち味も大切です。それぞれの先生の持ち味を活かしていくことが、その先生の授業の魅力につながります。だからこそ、先生同士のShareも大切で、他の先生のアイディアや実践からお互いに学びあいながら、持ち味をより活かしていきます。

Q. 子供によって、すでに英会話教室に通っていたり、帰国子女だったり、全く英語未経験だったりすると思いますが、評価のつけかたはどうされていますか?

A. 確かに子供達の英語経験は様々ですが、はじめにお話したように「ただ英語ができる」「英語が話せる」だけでは評価しません。英語の授業では、友達との「教えあいっこ」も良しとしています。それは、Communicationの力が、「ただ自分だけ言えればいい/できればいい」というものではなく、相手の思いを聞いたり、困っていたら助けてあげようとしたり、嬉しい事を一緒に喜ぶことができることにつながっていくことが大切だからです。評価は、子供達自身にもさせます。子供は正直なので、子供達の自己評価と私の評価で大きく異なることは、あまりありません。子供達も何が評価されているかわかっているのだと思います。

 

小川先生、本当にありがとうございました。学生達は、今回、小川先生に教えていただいたことを活かし、自分達の英語活動のLesson Planを作成し、期末には模擬授業をします。