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    更新日 2025年6月10日

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研究テーマ1

TOP > 研究テーマ01「トマト」 > 01-1. 野生種トマトとは? - 野生種トマトの分布

野生種トマトとは?

野生種トマトはどんなところに分布している?

クイズ:トマトの原産地(ふるさと)はいったいどこでしょうか?
野生種トマトの主な分布地域とその種類
栽培種、および野生種のトマトの分類と主な特徴
種の分類方法はどうやって行うの?自然分類について
トマト属(Lycopersicon属)および近縁のナス属(Solanum属)の種の分類方法


クイズトマトの原産地(ふるさと)はいったいどこでしょうか?

答え4.南アメリカ
メキシコから、南アメリカのアンデス山地、およびダーウインの進化論で有名なガラパゴス諸島です。現在でも、その近縁の野生種が自生しています。
メキシコでは、やや湿った地域にも自生していますが、アンデス山地やガラパゴス諸島では、ほとんど雨が降らない乾燥地帯に自生しています。

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野生種トマトの主な分布地域とその種類

地図、または表に記載されたトマトの学名をクリックすると写真が表示されます。

A地域(メキシコ) Lycopersicon esculentum Mill.(栽培種のトマト)
L.esculentum var. cerasiforme
B地域(メキシコ〜ユカタン半島) Lycopersicon esculentum Mill.(栽培種のトマト)
L.esculentum var. cerasiforme
L. pimpinellifolium
C地域(ガラパゴス諸島) L.cheesmanii
L.cheesmanii f.minor
D地域(ペルー〜ボリビア) L.pimpinellifolium
L.parviflorum
L.chmielewskii
L.peruvianum
L.(Solanum) pennellii
E地域(チリ) L.chilense
S.lycopersicoides
S.rickii
S.ochranthum
S.juglandifolium

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栽培種、および野生種のトマトの分類と主な特徴
  ※現在、判明しているもののみ抜粋

「野菜園芸学」文永堂出版株式会社(大学生用教科書・9月下旬発売予定)を参照してください。
下記の表(自然分類)は誰でもわかりやすいように、それを改変したものです。

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種の分類方法はどうやって行うの?自然分類について

自然分類とは、植物分類学による分類であって、植物の進化論を踏まえて系統的に植物を分類するものです。

歴史
スエーデンの植物学者リンネ(Linne)が1753年に「植物の種」(Species Plantrum)を出版し、初めて植物の分類を体系化してわかりやすくし、命名法を作りました。

分類の階級(植物の例)
植物の分類群の階級と名称を以下に示しました。
界(※1) Kingdom 門 Division
綱 Class 亜綱 Subclass
目 Order 亜目 Suborder
科 Family 亜科 Subfamily
連 Tribe 亜連 Subtride
属 Genus 亜族 Subgenus
節 Section 亜節 Subsection
種 Species 亜種 Subspecies(subsp.)
変種 Variety(var.) 亜変種 Subvariety(subvar.)
品種(※2) Forma(f.) 栽培品種(※3) Cultivar(cv.)
※1:植物界
※2:植物分類学上の用語
※3:栽培品種とは、人為的に作出した小変異で、ある何かの形質によって明らかに区別され、繁殖によっての特徴が維持される栽培植物の集団のことをいう。

表記の仕方
上記を全部表現するのは非常に大変です。そこで、属以下を簡略して表記します。
ところが、園芸植物には品種数が極めて多いことから、栽培植物命名規約に従って、「属名+種小名+品種名」の3つを連記(命名者を入れると4連記)して、種の命名者を種小名と品種名の間に付記する方法がとられます(今西、2000)。
トマトなどは栽培品種が極めて多いので同様の方法を用います。

【例】Lycopersicon (属名) esculentum (種小名) Mill.(命名者)cv. Momotarou (品種名)
※属名と種小名はイタリック表記

※野生種トマトの場合
栽培品種ではないので、「属名+種小名」の2つのみを連記(命名者を除く)します。

【例】Lycopersicon (属名) pimpinellifolium (種小名) (Jusl.) Mill.(命名者)

【例外1】Lycopersicon (属名) esculentum (種小名) var. cerasiforme (変種)

この場合のcerasiforme は栽培品種がエスケープ(逸脱)して変種になったとして つけられました(Esquinas-Alcazar, 1981)。わが国ではチェリートマト、ミニトマトと 呼ばれています。

【例外2】Lycopersicon (属名) cheesmanii (種小名) f. minor (品種)

ガラパゴス諸島に自生する野生種トマトで、Lycopersicon cheesmanii Rileyが一般的なのですが、この種だけは外見上、葉はしだ状であり植物体全体に毛が多く、とても同じ種には見えません。しかし、栽培している種ではないので「栽培している品種」の意味ではありません。植物分類学上で使う品種という「f. 」を使ってLycopersicon cheesmanii Rileyと区別しています。

【例外3】Lycopersicon (属名) (Solanum ) pennellii (種小名) Dun.(命名者)

これでは、トマト属とナス属が同時に書いてあってわかりませんね。実は発見以来、いまだにどちらの属が判別がむづかしいので両方を同時に併記しているのです。
・花は黄色=トマト属
・雌しべが飛び出している=ナス属
・栽培種と交雑できる=トマト属
・花柄の離層の位置が基部にある=ナス属
・葉緑体DNAによる判定=トマト属
・受粉様式=ナス属
・離層細胞のでき方=ナス属
上記のように、トマト属とナス属の特徴を兼ね備えていることがわかりますね。

【例外4】Series (列) Juglandifolia (列名)

これに属する種には、Solanum rickii Corr. とSolanum ochranthum があります。
つまり他の野生種トマトとは違う列の下に、属 種小名 命名者があるわけです。 植物分類学上はどうみてもナス属であるが、極めてトマト属に近い存在である種のグループをいいます。同じ地域に自生するジャガイモの野生種は、Solanum tuberosumといい、地下に茎を形成しますが、上記の2種は地下に茎を形成せず、花もトマトと同じ黄色です。

【例外5】ここまでくると嫌になるでしょうが、重要です。

野生種トマトでは、同じ種であっても分布地域が広大であり谷、川、町、島ごとに異なった形質を持っていてとても同じ種とは思えないものもあります。
特に、機能性を追及する私たちは、「この種に耐塩性があった」といわれても、「どの島の?」 「どのあたりに自生していた変種ですか?」となります。
同じ種でひとまとめにして「耐塩性がある」といってはいけない場合が多いのです。
そこで、どの地域に自生していたか明瞭に区別、分類して保存し研究に用いています。
これは国際的に共通のことであるので、Lycopersicon accessionの頭文字をとり「LA+番号」で表示します。これが、野生種のトマトでいう品種の変わりになるものです。
最初に行ったアメリカ・カリフォルニア大学の方法にならってLA番号をつけています。
なお、わが国ではaccessionというと「系統」を意味し、人為的に育種して系統を作った場合と混乱するとしてLAをLycopersicon strainとし「LS+番号」で表示することもあります。どちらも区別することでは同じですが、時々「LA番号をLS番号に置き換えて表示」してある場合があるので、混乱しますから確認が必要です。

【例】Lycopersion cheesmanii f.minor LA483
ガラパゴス諸島に自生する耐塩性を有する機能性の高い野生種トマト。しだ状の葉を有して節間は極端に短く職物体は毛で覆われています。オレンジ色の果実をつけます。
【例】Lycopersicon cheesmanii Riley LA1039
同じくガラパゴス諸島に自生していま すが、葉は栽培種トマトを小型化したような形状で、節間が長く、植物体は毛がほと んどありません。黄色い果実をつけます。耐塩性はほとんどありません。

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トマト属(Lycopersicon属)および近縁のナス属(Solanum属)の種の分類方法について

トマトはナスの仲間に属し、栽培種を含めて全部で10種あります。
ナスはトマトと同じナス科の植物ですが、南米には野生のジャガイモが隣接して自生していることがあります。
トマト属(Lycopersicon属)とジャガイモ属(Solanum属)は分類上、属の単位(種の一つ上の単位)で異なっていますが、類似点も多く見られます。
トマトとジャガイモの細胞を融合させて作った植物、「ポマト」はあまりにも有名ですね。
ここでは、もっとも一般的なRick博士による、栽培種との交雑の難易による分類を紹介します。

栽培種と交雑
できるグループ

esculentum-
complex group
種名 完熟果実
の色
原産地と主な特徴 地図
記号
L.esculentum 赤色 メキシコ A
L.esculentum var.cerasiforme 赤色 メキシコ
栽培種の直接の祖先種といわれている
B
L.pimpinellifolium 赤色 メキシコ〜ペルー
野生種トマト。病害抵抗性を有する系統がある
B
L.cheesmanii
(L.cheesmanii f.minor)
赤色 ガラパゴス諸島固有種
野生種トマト。島ごとに果実の色に変異がある。高糖度、高β-カロテン耐塩性を有する系統がある
C
黄色
L. parviflorum 緑色 ペルー原産
高糖度を有する系統がある野生種トマト
D
L. chmielewskii 緑色 ペルー原産
高糖度を有する系統がある野生種トマト
D
L.hirsutum 緑色 ペルー原産
果実に毛が多く耐虫性、耐寒性、耐旱性を有する系統がある野生種トマト
D
栽培種と交雑
できないグループ

peruvianum-
complex group
L.peruvianum 緑色 ペルー原産
果実に葉紫色のストライプが入る系統がある。TMV耐性など耐病性、耐塩性、耐旱性を有する系統がある。野生種トマト
D
L.chilense 緑色 チリ原産
シダ状の葉を有する。耐旱性を有する系統がある。野生種トマト
E
L.(Solanum) pennellii 緑色 ペルー原産
トマト属かナス属か不明の種。
植物体全体に特殊な分泌腺があり害虫を寄せ付けない。高糖度、耐塩性、耐旱性を有する系統がある。野生種トマト
E
S.rickii 緑色 チリ原産
形態的にはナス属であるがトマトに類似した果実をつける。β-カロテン含有量が高い。野生種トマト
E
S.ochranthum 緑色 チリ原産
木本となり1年以上経過して果実が熟す。
耐塩性、耐旱性、耐寒性を有する野生種トマト
E
01-1.野生種トマトとは? 目次
  • 現在この記事です野生種トマトはどんなところに分布している?(分布図・写真等)
  • 遺伝資源として種子を維持・保存する意義
  • 卒業研究を行った学生の声
  • 今後の展望
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