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    更新日 2025年5月19日

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花菖蒲の魅力に迫る!

TOP > 研究テーマ02「花菖蒲」 > 02-2. 文化財としての価値 - あやめ文化の特徴

江戸時代以前の花菖蒲

あやめ文化の特徴

あやめの語源は何だろう?ショウブとの関係からみてみよう!
ハナショウブの語源はなんだろう?
稲作文化との結びつき

あやめの語源は何だろう?ショウブとの関係からみてみよう!

アヤメの語源については、さまざまなホームページを見ても大変な混乱をきたしているようです。最初に登場するのは「万葉集」ですが、ここでいう「あやめぐさ」は花にふれた歌は一つもないので、現在のアヤメではなくて、端午の節句に菖蒲湯として用いる「サトイモ科のショウブ」なのです。

アヤメの語源として、いくつかの説があります。

  • 1.花弁の元に網(あや)の目があるので、その形にちなむ。
    現実問題として、アヤメの花被の基部の黄色い部分には網の目があって、似ているカキツバタやハナショウブとはまったく異なっています。
    ⇒サトイモ科のショウブを「あやめぐさ」とよんでいる以上、アヤメの語源にはなりえません。
  • 2.アヤメ科のアヤメと、サトイモ科のショウブが剣状の似た葉を持っていることから、アヤメの葉が立ち並ぶ様子を、文目(あやめ)とみて名づけたという説があります。植物学的には成り立つが、国語学者からすればメには甲類と乙類があり、発音が違うので、「万葉集」の「あやめぐさ」の売や女は甲類で、目は乙類なので、文目の語源にはならないといいますが、葉の用途が観賞用の花より先行し、植物本来の特徴が葉で共通するので、文目説は捨てがたいものがあります。
  • 3.ショウブの名は漢名の「菖蒲」に由来します。中国の「菖蒲」はセキショウという植物が該当します。
  • 4.ゆえに、現在のアヤメは、あやめぐさ(本当はサトイモ科のショウブ)に似るが、花の器官が大変美しいので、最初は「はなあやめ」とよばれ、後にアヤメになり、それにともなって、「あやめぐさ」はショウブになったというややこしさがあります。

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ハナショウブの語源はなんだろう?

  • 1.上記のように、サトイモ科のショウブ、アヤメ科のハナアヤメ、いずれにも草の形が緑色で剣先ですっと尖っている、つまり非常に類似していたのが、「ノハナショウブ」です。したがって、旧暦の端午の節句に美しい花を咲かせるノハナショウブも「アヤメ科のアヤメ」と一緒くたに混同されて、いつの間にか「あやめ、はなあやめ」とよばれていたようです。
  • 2.江戸時代になって、「花の咲くあやめ」について、アヤメは「花あやめ」、ハナショウブは、「花しょうぶ」として分けるようになったようです。
    これは、江戸時代の旗本で、花菖蒲の育種で有名な松平左金吾(菖翁)も、
    アヤメ科のアヤメ=花あやめ
    アヤメ科のハナショウブ=花しょうぶ
    として分けたようです。
  • 3.なお、学術的には、
    アヤメ科のアヤメ=アヤメ
    アヤメ科のハナショウブ=ハナショウブ
    アヤメ科の野生のハナショウブ=ノハナショウブ
    と分けてきちんと書きます。
    ちなみに「菖蒲湯に使う」サトイモ科のショウブ=ショウブです。
    なかなか、ややこしいですが、本ホームページでは漢字、ひらがな、カタカナを使い分けています。

【参考文献】
植物と行事. 湯浅浩史. 2004. 朝日選書. 花菖蒲. 2006. 日本花菖蒲協会.

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稲作文化との結びつき

水田の畦道や、その脇にひっそりと風に揺れて咲いているノハナショウブを見ていると、稲作との関係が浮かんできそうです。農耕民族の日本人はこのノハナショウブを、いったどのような目で見ていたのでしょうか?

稲作は、縄文時代に大陸からと渡来して全国に普及しました。その際にまず行わなければならないことがありました。そうです。水田を作ることから始めなくてはならなかったのです。水田は水が引きやすい山と山の間に流れる小川沿い、平野であれば川に沿った地域に開墾して作っていきました。

そのような沢地にはノハナショウブが先住植物として自生していたのです。開墾にあたってはノハナショウブは邪魔な存在であったわけですが、今も昔もこれらを捨てることはなく、そっと、畦道に移すか、脇にひとめとめにして植えておいたのです。

クイズ まだ30箇所程度ですが、私の聞き取り調査によれば、稲作農家の方々の全員がまず口にすることがあります。それは何でしょうか?
1.「よくやってきたねえ」
2.「あなた、何しに来たの?」
3.「まず、あがれ、飲め」
4.「作業の邪魔だ、よげろ」
5.「誰だ、お前」

答え 2番
ノハナショウブを1株、ちょっと分けて欲しいことをお願いすると、「あの紫のか、あれならそこらに生えている」、「いらないからもってけ」。これはほぼ全国的な定番であったのです。ちなみに4と5の人は一人もいませんでした。

ただし、注意!稲作農家の方にとって、水田は「自分の庭」であり「命の源」です。決して、畦の上を勝手に歩かないこと。許可されても、畦を崩す歩き方を絶対にせず、農家の方を先頭にして従い、ノハナショウブは「農家の方自らに採集していただき、自分でグッズを持参してきて、掘り取らないこと」。
掘り取った場合、必ず穴に土を入れておくこと。最低限の礼儀です!これができない人は、ノハナショウブを採集してはいけません。
当然、花を研究する資格もありません。

当初、ノハナショウブの開花期を待って田おこしや水張り、あるいは田植えをしていたかもしれない、あるいは外花被の黄色い部分(アイの部分)を夕餉時間の指標にし、夕方になると一瞬の間、黄色い部分が輝くのを確認までして出かけた私には、まったくもって拍子抜けではありましたが…

ただし!灯台元暗しとはこのことで、朝一番に起きてふと玄関先に出ると目の前の自家用の畑の中に、無造作に植えられているノハナショウブ、これこそが色変わりであったり、形が変わった変異系統であったりするのでした。お聞きすれば、水田を開墾するにあたり、非常に珍しいきれいな色や形をしたノハナショウブがあれば、自宅の庭に植えておいて鑑賞したのだそうです。このようにして、庭先にノハナショウブの変異系統が集められていき、自然に交配を繰り返していった結果、栽培種に近いような色、形を有する系統が出来上がっていったものと考えられます。
もう少し、聞き取り調査が必要ですが、自宅の水田にノハナショウブが自生している稲作農家さんは区画整備の影響もあって、ほとんどないといっていいでしょう。


自宅前に無造作に植えられていたノハナショウブをはじめとするアヤメの仲間

私たちから見れば、貴重な遺伝資源の宝庫です。右は花色変異の白花(非常に貴重)ですが、普通に庭先に植えられていました。
このような変異系統が、江戸に集められて多彩な栽培品種が育成されていったのでしょう。

02-2.江戸時代に栄えた「花菖蒲」の文化財としての価値 目次
  • 浮世絵に見られる花菖蒲
  • 伝統と文化について知ろう
  • 卒業研究の紹介・学生の声
  • 江戸時代の花菖蒲の浮世絵からみた、当時の花菖蒲への思い-花菖蒲、海外へ飛び出す!
  • 江戸時代に育成された「古い品種群」を保存する意味はあるのですか?
  • 現在この記事ですあやめ文化の特徴
  • 今後の展望
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