卒業生代表スピーチ

島根 楓さん

令和6年度リベラルアーツ学部卒業生

VOICE

厳しい寒さも和らぎ、少しずつ暖かで穏やかな気候になってきました。
本日は、私たちのためにこのような素晴らしい式を挙行して頂き、誠にありがとうございます。卒業生一同、心より御礼申し上げます。
また、ご多用の中ご臨席賜りました教職員の皆様、私たちを支えてくださった皆様に深く御礼申し上げます。

私は6人兄弟の大家族に生まれ、常に賑やかな環境で育ってきました。人に対する立ち居振る舞いは兄姉(きょうだい)を見て真似ていたので、周囲からは「しっかり者だ」と言われることがあります。
しかしきょうだいの中では5番目で、兄2人と姉2人に甘やかされて育ってきました。そのため自分が甘えられる年上と一緒にいることが多く、高校までの深い交友関係も先輩の方が多い傾向にあります。そのため、他者との交流が制限されることは、私の中で当たり前に過ごしてきた環境が大きく変化することでした。

遡ること4年前の春、新型コロナウイルスの猛威が世界を覆う中、私たちは玉川大学に入学しました。入学式こそ対面で執り行われたものの、マスク越しの会話、オンライン授業など、交流が制限され、互いの素顔を見ることもままならない状態で学生生活が始まりました。
入学前に思い描いていた賑やかなキャンパスライフを送ることはできず、「可哀そうだ」と声を掛けて下さる方もいらっしゃいました。
しかし私は、この環境だからこそ得られた貴重な経験があると確信しています。「日常」が失われたことで、やりたいことが当たり前にできる環境のありがたさに気付くことができ、どんなに過酷な状況下に置かれても適応する力を磨くことが出来たからです。

その中でも私が痛感したのは人との繋がりの尊さです。
コロナ禍が収まって制限がなくなり、大学で他者と活発に交流するようになったのは、既に後輩の方が多い3年生になってからでした。
学生生活の中でも特にサークル活動に注力しました。自分と異なる学年・学部が多く集う場所で、あまり得意ではなかった後輩とのコミュニケーションも積極的に取り組みました。
3年目の春、初めて取り組んだ「勧誘」で、後輩たちが甘えられるような先輩であろうとして、気合が空回りしてしまいました。それでもやっと取り戻した機会を無駄にしないように、多くの仲間たちと関わってきました。今では多くの年下の友人にも恵まれています。

人との交流を積極的に行うことで、自分のコミュニティがどんどん広がっていきました。広がったコミュニティは新たな知見をもたらすだけではなく、新たな挑戦の機会を与えてくれることもあります。このスピーチもそのうちの一つです。とても緊張していますが、重要な式典で代表を務めるという機会をいただけたのも、多くの皆様との繋がりによるものだと感じております。

すべての人と円滑な交友関係を築くことは決して容易ではありません。時に悩み、傷つくこともありました。しかし、そのたびにどうすればより良い関係を築けるか、試行錯誤を重ねることで、自分なりの対処法を見出し、柔軟性を身に付けることができました。
社会に出れば、苦手な相手とも協力しなければならない場面があります。大学生活を通じて培った対人スキルはこれからの人生に必ず役立つと信じています。
もし「日常」を失う体験がなければ、人との交流の尊さに気付かなかったかもしれません。もし玉川大学でなければ、多様な価値観に触れる機会に恵まれていなかったかもしれません。もしリベラルアーツ学部でなければ自身の視野を広げることは叶わなかったかもしれません。感染症と向き合いながら過ごした日々は、私たちにとってかけがえのない糧となりました。
幸いにも、多くの方々のご尽力によって、私たちは学生のうちに「日常」を取り戻し、社会に出る前に様々な挑戦をする機会を得ることが出来ました。この特別な経験を経て得た学びを胸にそれぞれの道を歩んでまいります。

最後になりますが、これまで熱心にご指導くださいました先生方、学生生活を支えてくださった教職員の方々、そして見守ってくれた家族。全ての皆さまに改めて御礼を申し上げます。そして玉川大学の益々のご発展をお祈りし、私の挨拶とさせていただきます。

令和7年3月13日
卒業生代表 リベラルアーツ学部リベラルアーツ学科 島根 楓