ほうぎょく
宝玉
Hougyoku
伊勢系 | 【花容】垂れ咲き 【英数】三英 【花色】やや灰色がかった藤色(鳩色と称している) 【開花時期】6月上旬 上段の写真:2019年は6月4日開花。屋外の日陰で撮影 2016年は6月4日開花。室内で撮影 |
外花被 | : | 形状は丸弁です。外花被片の縁部は大きく波状にうねっており、花被表面には多くのしわがあります。周縁部は白色の覆輪が入り、開花当日は非常に目立ちます。 伊勢系の古花品種は、本来は室内で観賞するように育成された品種で、外花被片が大きく下に垂れる3英花です。青みがかった藤色で、やや灰色がかった、くすんだ藤色なので花菖蒲の用語では、この色を「鳩羽色」あるいは「鳩色」と呼んでいます。 伊勢系の花菖蒲品種では、外花被片の大きさは、3枚ともそれぞれが異なることや、3枚が弁の基部にある皺(しわ)の部分が隣の花被片と重なりやすいので、花の外観を見た場合に、どうしても左右非対称の成型にはならなので、整った形に栽培するのがむずかしいです。花被片が薄くて弱い形質なので、屋外では雨に濡れると痛みやすく、どうしても室内で観賞することになります。 写真撮影をする場合、室内で撮影すると(写真ではバックに簾がある下段の4枚)、本来の花色とは異なる、青みがかかった色になっています。上段の4枚の写真のように、鉢植え栽培をして屋外の直射日光が当たらないところに置いて撮影をすると、この品種本来の花色(いわゆる鳩色)に近いものになります。 |
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内花被 | : | 形状はさじ状でやや内巻きです。軸方向に立ち上がります。内花被の花色は藤色に近い淡い桃色で、周縁部には白色の覆輪が入ります。開花当初は内花被の淡い桃色と、花被の灰色がかった藤色とのコントラストが映えます。 |
花柱枝 | : | 淡い桃色で、中心部は藤色、周縁部は白色の糸覆輪となります。ずい弁は外花被片と同様のくすんだ藤色をしています。ずい弁は大きく細長く横に寝たように発達します。ずい弁先端は2裂に裂開し、切れ込みの入る「くも手」はほとんど見られません。 |
備考 | : | 戦前に育成されたといわれ、「伊勢系の古花」に分類されます。2016年、2019年の開花状況を見る限りでは6月早々に開花するので早生品種になります。この品種は本学で展示したところ、学生の間でも非常に人気のある品種の一つとなっています。 伊勢系品種は、垂れる姿によって「富士型」、「地蔵肩型」、「怒肩型」の3つに分類されますが、この分類でいえば、本品種は丸く抱えた「地蔵肩型」になりますが、その程度は弱いです→「花の品種改良の日本史参照」。この形質は本学の研究により、花の開花が進むにつれて変化することが明らかになりましたので、必ずしもこの形質になるとは限りません。 一般にハナショウブの染色体数は2n=24ですが、本品種は2n=25であると言われていました。本学で研究を行った結果、2n=25の異数体であることが明らかになりました。このような異数体は他の品種でも認められます。詳細は「落葉衣」を参照ください。異数体が生じる原因、1本多い染色体がどのような役割を果たしているのかは、現在継続して研究中です。 |
文献 | : |
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