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卒業研究紹介

2021年度卒業の生態系科学領域の卒業生による研究紹介です(友常 満利 准教授指導)

土壌圏への有機物供給源としての
ナラ類集団枯損の機能評価

日本各地でナラ類の集団枯損が流行状態にあるが、被害木(異常木)を土壌圏への有機物供給源として評価した例はない。そこで、異常木の有機物供給源としての質を明らかにする目的で、玉川学園にてコナラ異常木(葉リター、木質リター)の化学特性(全炭素・窒素、無機栄養塩、有機物)と分解速度を調べた。健全木と比べ、異常木の秋季葉リターは窒素量が有意に多く、夏季葉リターおよび木質リターは無機栄養塩量が有意に少ない結果が得られた。よって、秋季葉リターは特に窒素に富む資源として作用する可能性がある。また、夏季落葉・木質リター供給が異常木特有の現象であることから、コナラ異常木は森林生態系内で健全木と同程度かそれ以上の良質な有機物資源として機能する可能性が示された。

(左)乾式灰化法の様子(中)燃焼前後の試料 (右)ナラ枯れによる粗大有機物の無機栄養塩含有率の変化(TukeyHSDを使用)

研究に取組んだきっかけ、感想など
2020年夏、箱根新道沿いの山が赤く変色していたことからナラ類集団枯損(ナラ枯れ)を知りました。ナラ枯れは樹木が1、2週間で枯れ上がる流行病で、現在有効な防除策は確立されていません。伐採や焼却処理もありますが、ナラ枯れ木全ての焼却は困難です。本研究はナラ枯れ木を土壌栄養源の名目でそのまま放置できる理由があればと考え、始めた研究です。生産者、消費者、分解者の全てを対象とでき、大変楽しいテーマでした。