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卒業研究紹介

2021年度卒業の生態系科学領域の卒業生による研究紹介です(友常 満利准教授指導)

多摩川の河口干潟に生息するカニ類が
有機物分解に及ぼす影響

都市域に残された干潟の生態系サービスには、そこに生息する底生動物が大きな影響を与えている。本研究では、多摩川の河口干潟におけるカニ類が有機物分解に与える影響を評価するために、直接効果(摂食によるカニの有機物分解速度)としてカニの呼吸速度を、間接効果(巣穴の存在により加速する土壌微生物の有機物分解速度)としてカニの巣穴の有無を考慮した土壌呼吸速度を測定した。その結果、カニの呼吸速度は気温の高い時期に低く、高温環境がカニ類の活性を低下させた。一方、カニの巣穴は周辺土壌に対して好気的な環境を生み出し、特に高温期で土壌呼吸速度を増加させた。これらの結果は、有機物分解に対するカニ類の直接・間接効果の寄与が季節によって大きく異なることを意味している。

測定中の様子 (左) とアシハラガニ(右)

研究に取組んだきっかけ、感想など
多摩川の河口干潟は日本の重要湿地500に選出されており、自然の少ない都市圏に残された貴重な生態系である。また、都市圏の河川は汚れや有機物の流入量が多い。そのような環境下の中で多摩川の河口干潟を支えるカニ類がどのような役割を果たしているのかについて知りたかったため、私はこの研究を行った。研究の結果から、新たな発見を見出すことができたため、この約1年半の間、研究に費やした時間はとても貴重なものとなった。