卒業研究紹介
2023年度卒業の持続的農学領域の卒業生による研究紹介です(山﨑 旬 教授指導)
オオタニワタリ(Asplenium antiquum)の胞子体形成の促進等の人工増殖の検討および自生地観察と野外への移植実験
現在、野生植物の多くが絶滅の危機にあり、その原因の多くは自生地の開発や野生株の乱獲である。対策として人工増殖品の市場流通によって乱獲を抑制できると考えた。本研究ではオオタニワタリの人工増殖実験と自生地観察、および保全を目的に野外移植を行った。増殖材料の胞子については、1胞子嚢中に約50個含まれていることがわかった。胞子発芽には光が必要なく、前葉体形成には光が必要であった。また、前葉体に週に1度の滴水処理を行うことにより、胞子体の形成率が大幅に増加することがわかった。着生植物であり、自生環境では、その多くは成長するにつれ落下してしまい、安定した場所に生えたものが大きく成長できることが確認できた。久志農場での移植は現時点では良好な生育が確認されたが、もう数年間の経過観察が必要であると考えた。

左上:葉裏の胞子嚢群 左下:前葉体から分化した胞子体 右:自生地の状況
研究に取組んだきっかけ、感想など
絶滅危惧種・熱帯の植物・食べられるという点で卒業研究で扱うテーマを探していた際に、 先生に相談したところ、 オオタニワタリという名前が出てきました。 初めはどう扱うのかも分からず苦悩していたものの、 1年近く共に過ごした今では夢にまでオオタニワタリが出てくるようになりました。 聞いたことのない名前、 だけどどこかで見たことあるようなフォルムに愛着が湧き、 もうすぐ会えなくなると考えると寂しくなりました。