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卒業研究紹介

2024年度卒業の生態系科学領域の卒業生による研究紹介です(関川 清広 教授指導)

葉の機械的な傷が誘導する
短期的な光合成抑制のメカニズム

葉内のフェノール類は被食防御物質の一つと考えられ、なかでも縮合タンニンは被食者の消化管でタンパク質などを変性させる働きが知られている(大森ら、2023)。一方マテバシイの葉はフェノール類を多く含み、葉が傷つくとその近傍の光合成が急速に抑制され、光合成に対する被食防御物質のデメリットも報告されている(白石、2013)。本研究は、葉の傷による光合成抑制のメカニズムを解析することを目的に、小笠原諸島父島に自生する21種の木本植物を対象にした野外実験を2024年8月~9月に行った。葉身に穴をあけ、隣接する領域で生じる光合成抑制とその要因を20分間追跡した。その結果、縮合タンニン濃度の高い種ほど葉肉細胞でのCO2拡散が強く阻害され、光合成能力が大きく低下することが分かった。さらに、葉寿命の長い種ではこの傾向が比較的少ないこと、葉の葉身欠損率と穴あけによる短期的な光合成能力の低下には相関がないことも見出された。

小笠原での測定の様子

研究に取組んだきっかけ、感想など
指導教員から他の研究機関と小笠原諸島父島の植物について共同研究紹介され、この研究に取り組みました。初めは光合成測定や使用機器の操作に苦労しましたが、徐々に理解が深まり、楽しく研究を行うことが出来ました。小笠原諸島父島という綺麗な海に囲まれた島での研究は大変有意義でしたが、台風や雨で測定ができない日々や船が来ず食料が不足するなど苦労もありました。これらのすべてが、貴重な経験となりました。