卒業研究紹介
2024年度卒業の生態系科学領域の卒業生による研究紹介です(關 義和 教授指導)
アオバトの海水摂取行動に及ぼす影響
―雌雄差からの検討―
アオバトの海水摂取の役割、特に栄養要求と関連を明らかにするために、2024年5月から10月にかけて神奈川県大磯町の海岸で本種の飛来数を調査した。繁殖初期における飛来数は、オスよりもメスで多い傾向が見られた。メスは、繁殖期には卵形成や育雛のためのピジョンミルクの生成を行うため、海水の摂取によりナトリウム等の繁殖行動に必要な栄養素を補給していると考えられる。一方で、 調査期間を通じて継続的にオスの飛来も確認された。一般的にハト類はオスもピジョンミルクを生成して育雛を行うことが知られている。アオバトのオスも同様と考えると、 本種のオスもピジョンミルクの生成に伴う栄養の損失を補うために海水を摂取していることが示唆される。繁殖期のピークが終了した9月から10月にかけてはオスとメスともに飛来数が少なったことからも、アオバトの海水摂取は繁殖に伴う栄養要求と関連が強いことを示している。

研究に取組んだきっかけ、感想など
私がアオバトを研究したきっかけは、生まれ育った地域がアオバトの天然記念物に指定されており、幼い頃から親しみがあったためです。研究を進める中で、資料の少なさに苦労しましたが、アオバトの珍しい生態は非常に興味深いものでした。炎天下での観察は大変でしたが、自分の手で得たデータから結果を導き出せたことに大きな達成感を感じました。この研究を通して多くを学び、貴重な経験を得ることができました。