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卒業研究紹介

2024年度卒業の生態系科学領域の卒業生による研究紹介です(關 義和 教授指導)

ニホンジカによる植生への影響を抑止するための簡易的な紐柵の有効性

紐で作成した簡易的な柵がニホンジカの採食による植生への影響を抑制できるか検討するため、箱根自然観察林に紐を用いた防鹿柵区、紐を用いた簡易柵区、柵を設置しない無柵区の3種類の調査区を設置した。下層植生に乏しい環境で簡易柵区への本種の侵入状況を自動撮影カメラにより調べた結果、柵外を通過する回数が多かったが、侵入または未侵入の状態で柵内の植物を採食する行動も複数回観察された。同じ環境下で各調査区の植生調査を行った結果、植物種数は防鹿柵区では多く、簡易柵区と無柵区では少ない傾向にあった。下層植生が豊富な地点では乏しい環境と比較して、侵入または未侵入の状態で柵内の植物を採食する割合が多くなり、この傾向は柵が大きい場合により顕著であった。したがって、簡易柵内の植生が回復するにつれて本種の侵入や採食の頻度が増加すると予想されるため、本研究で用いた簡易柵は植生を保全するためには有効ではないと考えられる。

設置した簡易柵とニホンジカ(上)、ニホンジカの行動別回数(下)

研究に取組んだきっかけ、感想など
私は元々野生動物に興味があり、その中でも特にニュースなどで度々話題となるニホンジカに関係する研究がしたいと思い、この研究に取り組みました。柵の設置や植生調査を行う際には先生方や友人に手伝っていただき、研究のデータを収集することができました。研究の中で実際に柵を設置しニホンジカの行動を観察する中で、設置した簡易柵の紐が切られてしまうなどの被害を確認し、改めてニホンジカ対策の難しさを感じました。