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    更新日 2025年9月16日

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花菖蒲図鑑

TOP > 花菖蒲図鑑 > 品種一覧-か行 > 北野天使

きたのてんし

北野天使

Kita-no-tenshi

野生(例外) 【花容】垂れ咲き 【英数】三英 【花色】藤色を帯びた桃色(年次変化があり、淡い桃色)
【開花時期】6月中旬から下旬(2007年は6月23日、2011年は6月11日開花)

外花被 : 円形に近い丸弁で(縦×横=6×5p)、肩内巻きで先端部は花茎に向かって特に内巻きになります。花被片全体の花色は桃色です。アイの部分から先端部に向かって細い筋が伸長しますが濃い桃色の場合や、地の色が淡い場合には、着色しません。
濃い桃色花色が発現したときには、アイ周辺のハローは濃い青紫色になります。
内花被 : 非常に細長い形状で、軸方向に垂直に立ち上がり、先端部は剣先のようにとがり、やや内巻きになります。花色は外花被片と同様に薄い桃色です。
花柱枝 : 濃い桃色で太く、周縁部は淡い桃色になります。外花被片が濃い桃色の場合には、ハローと同様に青紫色を帯びた桃色です。先端部は2裂開し、極端に内巻きとなり短いずい弁が発達します。ずい弁の先端部は鋸歯状で、色は桃色です。
備考 : 青森県、下北半島に自生していた野生のノハナショウブです。観賞価値が高いと認められ、「北野天使」(東田万年氏が1980年に発見したと言われている)と名付けられました。この地域には広大な湿地帯が多く、ごく稀にこのような桃色の変異個体が発見されるようです。
「ローズ クイン」に似ていますが、花茎は1.5p以上でわい性、倒伏しにくく、根も太いです。丸弁で弁質が厚く、花色も年次差がありますが濃い藤色を帯びた桃色です。風雨にも耐えるので、花菖蒲園で植栽されていることもあります。
なお、野生のノハナショウブでこのような花の形状や花色に変異が生じる場合、遺伝子侵食が生じている可能性がないか、本学では徹底的に調査していて遺伝子侵食のない、「確かな株」として「株分け」で維持・保存しています。
遺伝子侵食の主な原因は、側に栽培品種のハナショウブが植栽されていることで昆虫による行動半径の半径500mを追跡調査します。
1980年の発見当時、この地域には、数キロにわたって広大な湿地とノハナショウブ群落があり、栽培種の植栽はない場所(人家がない)であったので、野生のノハナショウブ由来の変異系統と見なしています。ただし、このような変異株は株分けで増やし、年次変化、環境変異の有無を調べて品種として扱います。
残念なことに、2000年以降、当地の湿地は地球規模の温暖化によりほぼ喪失し、人工建造物などが立ち並ぶ地域になり自生地は喪失しましたので、このような野生種の発見はすでに困難となっています。
なお、野生のノハナショウブにおいても、紫色色素の欠損による淡い色の発現はありますが、このような濃い藤色を帯びた桃色の発現は、科学的に説明しにくい部分ですので本学では引き続き、継続調査中です。
参考文献 :
  1. 田淵俊人.2015.日本固有植物と文化 (1)ノハナショウブと農村文化 日本固有植物の保全に向けた提言 (1)日本の風土が育んできた、固有の植物と文化の関係 『花かつみ伝説』に見られる園芸文化.日本固有植物と文化−生態系の喪失が日本固有植物に及ぼした影響とこれら植物の保全について−p13−14,23−29.花と緑の博覧会,大阪.
  2. 田淵俊人.2014.伝統園芸植物の保全とナショナルコレクション」−「古典園芸植物の花菖蒲−その起源となったノハナショウブの文化財、遺伝資源としての保存」.公益社団法人 日本植物園協会 平成26年度 第2階植物研究会 要旨(代表:岩科司)
  3. Tabuchi,T.2014. Physical and Biological Properties of Agricultural Products. (Kondo,N., T.Nishizu, T.Hayashi, Y.Ogawa, H.Shimizu and K.Goto edts. ) Physical and Biological Properties of Agricultural Sections 2.3.3-2.3.6 Dermal system(1) Morphological characteristicsof epidermis (2) Fluidity and frictional properties in relation totrichomes (3) Optical characteristics related to epidermal cells and the structure of the surface (4) Optical properties related to suticuleand wax (5) Pigment&optical properties 2.3.4.Fundamental tissue systems (1) Shape and structure of plant (2) Intercellular space (3) Cell wall (4) Cell size and arrangement (5) Pectin 2.3.5.Vascular bundle system (1) Xylem tissue (2) Phloem tissue 2.3.6. Inclusions in the cells (1) Polysaccharide and starch grain (2) Protein (3) Secondary metabolismsを分担執筆.Kyoto University Press, p34-p59. ISBN:9784876983896
  4. 田淵俊人・平松渚・中村泰基・松本和浩. 2010. ノハナショウブの変異性に関する研究(第18報)ピンク色および白花花色を有するノハナショウブの特性の比較. 園芸学研究 (別1): 438.
  5. Chino Nanae, Takayuki Kobayashi and Toshihito Tabuchi. 2020. Characteristics of the Japanese wild iris mutant showing white color on the rim of the outer perianth found around the Shirakami Sanchi. Shirakami Kenkyu. 14:49-64.Hirosaki University press.
  6. 小林孝至・和田 瞳・人見明佳・田淵俊人.2016. アイソザイム 解析から見た、ハナショウブの起源−ノハナショウブとの比較−  園芸学研究. 園芸学研究16(1):412.

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