しかいなみB
四海波B
Shikainami B
伊勢系 | 【花容】垂れ咲き 【英数】三英 【花色】薄い藤紅色 白筋 短幹/中輪 【開花時期】5月下旬〜6月上旬(撮影:2017年は6月15日、2018年は5月23日、撮影者:大学院修士課程・唐澤健太)、2025年6月9日開花 |
分類 | : | 伊勢系の古花です。 |
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外花被 | : | 円形で薄い藤紅色地に白色の筋が入り、花被片全体が内側に巻いて、らせん状になり、結果として大きく波をうったような「ウェイブ状」の構造になっています。花被片の質は他の伊勢系品種と比較してやや硬く、大きく下垂しません。 いわゆる「肩」の部分では、縮緬状の構造が発達し、白筋に見える維管束部の「脈」と呼ばれる部分の間には、非常に細かい縮緬状構造が発達します。 |
内花被 | : | さじ状で細長く、軸に対して斜め上に立ち上がります。やや内巻きで、花色は外花被片よりも淡い藤紅色、紅色の糸覆輪が入っています。 |
花柱枝 | : | 細長く外花被片に沿うように水平に伸長します。淡い黄色みがかった白色で、先端部は2つに裂開して水平、もしくはやや斜め上に伸長し、ずい弁を形成します。先端部には非常に細かい鋸歯、「くも手」が発達することがありますが顕著ではありません。 ずい弁の色は外花被片と同じ淡い藤紅色で非常に細い白筋が入ります。 |
備考 | : | 1907年以前に、現在の三重県の津市で保存されていた品種です。同じ三重県の松阪市で保存されている品種にも、「四海波」という同じ名称の品種があったため、松阪市の品種を「四海波A」とし、津市の品種を「四海波B」として、両者を区別しているようです。 なお、「四海波」という品種名は、ハナショウブには肥後系にも4品種あり、それぞれの 花容、花色などが全く異なりますので注意が必要です。 本品種は、同じ伊勢系品種の「朝日空」と非常に似ていますが、本学で調査した結果、花被片の質が硬く、外花被片全体が大きく波打ったようになり、大きく下垂しない点、および縮緬状構造の発達の程度が著しいことから、本学で保存している株では「朝日空」とは形質が異なります。「朝日空」は、外花被片が開花とともに伸長してそのまま軸方向に下垂します。この形質が、遺伝的なものかどうか、環境変化によって年次変化が生じるかについては、引き続き研究していく予定です。 外花被片の紅紫色(藤色)の濃淡には年次変化があります。濃い場合には、白い筋(脈)が明瞭に見えます。花茎は50cm程度で短く、葉は軸方向に直立します。 |
引用文献 | : |
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