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    更新日 2025年7月9日

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花菖蒲図鑑

TOP > 花菖蒲図鑑 > 品種一覧-さ行 > 不知火

しらぬい

不知火

Shiranui

伊勢系 【英数】三英 【花色】淡紅がかった藤色 花径は15cm(2021年6月9日)
【開花時期】6月初旬〜中旬
2014年は6月14日、2016年は6月15日、2021年は6月9日に開花

分類 : 外花被片が大きく下垂した伊勢系の「古花」。三英花で、典型的な伊勢系の花菖蒲の品種の花容です。伊勢系の品種群には垂れ咲きの花形によって、傾斜型に垂れるもの(富士山型)、丸抱型に垂れるもの(地蔵型)、および直線的に肩を張って垂れるもの(怒肩型)、の3つに分類されます(冨野、1967の分類法による)。この冨野による垂れ方の分類にしたがえば、「富士山型」に分類されます(詳細は引用参照)が、この点は開花が進むにつれて次第に形態が変わってくることが、本学の研究で明らかになっています。
外花被 : 形状は丸弁で大きく発達し、軸方向に斜め傾斜状に下垂します。花被片全体が大きくうねって、波打った状態になり、周縁部が内側(花茎側)に向かって大きく巻いて、いわゆる「内巻き」の状態になることもあります。外花被片の縁部の基部(肩とも呼んでいます)の部分が大きく内側に巻いた状態になると、その部分から先端部の組織が大きく波打った(ひねりが入った)状態になります。
花被片の表面には皺状の細胞が多く、外花被片同士が重なっている部分や、周縁分ではその程度が著しくなりますが、この形質には個体差があります。
花色は淡い藤紫紅色(桃色に近い)で、アイの部分から若干、細い白色の筋が中心部付近まで発達しますが、目立った筋ではなく途中で消えるようです。
アイの周辺部は薄い青紫色ですが、アイ周縁部の白色と混同して遠くから見ないとなかなかわかりません。直射日光が当たる場所では、薄い紅色が見えず、白色に近くなります。
内花被 : 形状は楕円形で幅が広く、やや内巻きとなって斜め上方向に斜立します。周縁部はややフリルが入り、若干の縮緬状構造が発達し、皺が見られます。花色は淡い藤紫紅色で中心部は白色です。
花柱枝 : 軸方向に斜め上に向かって直立し、先端部に向かうにつれて若干幅広くになります。 色は白色で周縁部は藤紫色です。先端部は2裂開してさじ状のずい弁が形成されます。ずい弁はやや直立して先端部は花柱枝の方向に伸長し、やや内巻きとなり、先端部には細かな鋸歯状構造(くも手)が見られます。ずい弁の先端部の色は藤紫紅色です。
備考 : 1904年以前に伊勢地方で育成された、いわゆる「伊勢古花」であると言われています。伊勢地方で発達した伊勢系品種群は、1904年からの記録しかないので、それ以前の記録を辿るのは困難ですが、冨野(1967)は紀州藩士の吉井定五郎が150年ほど前におそらく江戸から持ち帰って伊勢系品種群を育成したとする説を唱え、江戸系の垂れ咲きの品種から育成したとする説を支持し、著書にも表しています。 本学で分子生物学的な手法によって、この課題に取り組んだ結果、伊勢古花と呼ばれる品種群の内、「落葉衣」、「瑞宝」、「村雨」、「宝玉」、「桃の里」、「狩衣」、「乙女」は、三重県の斎宮に自生する野生のノハナショウブ由来であることを発見し報告しました(知野ら、2020;Tabuchi ら、2024)。 また、伊勢系の古花品種の中には、通常の染色体数(2n=24)とは異なる、異数体(2n=25)の存在が知られています。本学の研究で、「不知火」、2n=25の異数体であることが明らかになっています。この要因については現在も継続して研究中です。他の異数体品種については、「落葉衣」を参照ください。
このような研究を行うためには、「伊勢古花」と呼ばれる純粋な品種株を複数株と、三重県・斎宮の野生のノハナショウブにつき、株数を多くして維持・保存していることが重要です。この品種を含め、現在その由来を継続研究中です。
参考文献 : ・冨野耕治.1967.花菖蒲.p76-77, 81.泰文館,東京.
・中村泰基・田淵俊人・平松渚.2008.日本伝統の園芸植物,ハナショウブの特性に関する研究 2.伊勢系ハナショウブの外花 被片に特徴的な「縮緬状構造」の組織学的構造に関する研究.園芸学研究 7(別2):577.
・Toshihito Tabuchi,Azusa Komine, Takayuki Kobayashi.2013.Histological structure of the ‘Crepe-like’structure of the outer perianth in the Ise type cultivar in the japanese irises.  International Symposium on Diversifying Biological Resources.46-47.
・田淵俊人.2016.花の品種改良の日本史(柴田道夫編).伊勢ハナショウブの成立.悠書館,東京.p250−251.
・小林孝至・田淵俊人.2020.エステラーゼアイソザイム分析による伊勢系品種のハナショウブの起源.園芸学研究.19(別1):416.
・Tabuchi, T. and T.Kobayashi. 2024. Characteristics and apprication style of Japanese irises (Hana-syoubu) 2.Ise-group. WORZ Book. 99.  International Society for Horticultural Science

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