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    更新日 2025年7月9日

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花菖蒲図鑑

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あおいまつり

葵祭

Aoimatsuri

   
江戸系 【花容】平咲き 【英数】三英 【花色】白 紫脈/中輪 【開花時期】6月中旬 2009年は6月18日開花

分類 : 江戸系の古花。三英花です。
外花被 : 円形で若干の波打ちがあります。白地にうすい紫色の筋が入ります。花被片の周縁部が内側に巻いた結果、「受け咲き」のように見えることもあります。群生している写真は明治神宮で撮影したものですが、そのように見えます。
内花被 : 太くて短く、軸方向に斜め上に立ちあがります。地の色は赤紫色で白色の糸覆輪があります。
花柱枝 : 紫色です。葵形同様、花柱枝と同じ大きさに見えるので内花被が多弁化しているように見えます(→葵形を参照)。
備考 : 江戸時代に育成されたと言われていますが、年代は不明です。本品種は本学と明治神宮との共同研究によって分譲されました。
研究論文 : 田淵俊人・平松渚・中村泰基・坂本瑛恵.2008.日本伝統の園芸植物,ハナショウブの特性に関する研究3.明治神宮の花菖蒲(林苑)における土壌,および水質について.園芸学研究7(別2)578.
概要 :

1885年(明治18年)以前に育成されたと言われている、江戸系の古花です。葵の上などと似ていますが、本品種は、外花被片が軸方向に伸長し(並行方向に)、内花被片も広く短いです。また、外花被片は波打っており、しばしば受け咲きに見えることがあります。
明治神宮・林苑と本学との共同研究(特別に許可を頂きました)により、林苑の土壌、および水質の調査を実施しました(一般には花菖蒲田に入ることはできません)。
その結果、「清正井」(きよまさのいど)から湧き出る、「湧き水」が花菖蒲園全体の水源になっています。その清正井の湧いている部分から下流域までの水や、土壌の酸度pH=6.5、COD価=4〜8(土壌)、8(水)、NH4-Nmg/L=0.2で、これは他の植物園と比較して施肥過多ではなく、むしろノハナショウブの自生地に近い値を示しました。
東京都の中心部、渋谷区から湧き出る、湧き水(年間を通して15℃前後)による栽培環境下で、本州中部の自生地とほぼ同じ水質、土壌特性を示していることは特筆すべきことです。
この地の花菖蒲の御苑は、江戸時代(1603〜1867年)の初めは肥後・加藤家下屋敷の庭園で、その後、彦根藩主・井伊家となり、明治維新(1868年)後には、皇室御料地となり、代々木御苑と称せられました。江戸時代には、家臣子女が米つくりを学ぶ稲田でしたが、1893年(明治26年)に明治天皇のお指図(思し召し)により「花菖蒲田」(林苑と呼んでいます)に改められ、今日に至っています。
このように、野生のノハナショウブの自生地と同様の水質を有するので、まずは花菖蒲の栽培には適しているといえます。
明治神宮・林苑では、歴史的な関係で「江戸系品種」のみ栽培・管理しています。本学で研究を行った2000〜2008年には、「宇宙(うちゅう、おおぞら)」や「霓装羽衣(げいしょううい)」、「昇竜(のぼりりゅう)」、「鶴の毛衣(つるのけごろも)」など、江戸時代に育成した「菖翁花」と呼ばれる品種なども菖蒲田に植えられていました。
名札が見えない品種もありましたが、2025年6月時点で筆者が現地で調査して、目視で確認をした品種を以下に列挙しました。なお、菖翁花は本学で分子生物学的に解明した品種としました。

菖翁花:
御幸簾、虎嘯、連城の璧、七宝、王昭君、和田津海 6品種

江戸系古花:
寛政、奥万里、伊達道具、玉宝蓮、玉鉾、桜川、座間の森、紫衣の雪、古希の色、群山の雪、九十九髪、滋賀の浦波、七福神、七小町、黒雲、佐保路、小町娘、初鴉、鬼ヶ島、錦の褥、鳳台、鳳凰冠、大江戸、松ヶ枝、深窓佳人、都の巽、夕陽潟、泉川、奥万里、秦王破陳舞(しんのうはちんのまい)、太平楽、波乗舟、峰の雪 33品種

新花(江戸花容):
水玉星、利根川、栄紫、追風

大船(例外、宮沢文吾博士育成):
揚羽、安積

その他:
大神楽、加茂祭、河原撫子

江戸系の古花の栽培にあたっては、肥料過多は避けるべきですが、栽培品種ですので、ノハナショウブよりも多めの肥料(特にリン酸やカリウムの他、微量栄養素)が必要です。なお、明治神宮・林苑の場合には、土壌中にホウ素などの微量要素が必要であることも助言させて頂きました。

参考文献 :
  • 田淵俊人・平松渚・中村泰基・坂本瑛恵.2008.日本伝統の園芸植物,ハナショウブの特性に関する研究 3.明治神宮の花菖蒲園(林苑)における土壌,および水質について 英芸学研究 7(別2):577.
  • 田淵俊人.2016.江戸時代中期から後期―ハナショウブ栽培の飛躍的な発展と菖翁の業績.『花の品種改良の日本史』(柴田道夫監修).悠書館,東京.238−240.
  • Kobayashi, T. and T.Tabuchi. 2024. Characteristics and apprication style of Japanese irises (Hana-soyubu) 1. Edo-group and Higo group. WOTZ Book. International Society for Horticultural Science. 98.

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