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    更新日 2025年6月30日

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花菖蒲図鑑

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つくばね

筑羽根

Tsukubane

江戸系 【英数】三英 【花色】 淡い桃色の地に赤紫色の筋 【開花時期】6月初旬 2025年は6月22日開花

分類 : 江戸系の戦前に育成された古花品種。上咲きの三英花です。中には爪咲きに近いものもあります。
外花被 : 花蕾時には軸方向に向いています。開花当初は次第に先端部が付着していますが、次第に中心部が膨らむようにして最終的には、お互いの外花被片が離れ始めます。 一般的にハナショウブの外花被片は軸方向と直角に伸長して、外見上は水平方向に開いた状態になりますが、この品種は、軸方向にそのまま伸長して、そのまま軸方向に伸長し軸方向、「上向き」に開花します。このまま水平方向になることは少なく、開花が進むにつれて縮れて萎凋します。 外花被片のサイズは、非常に細長く(6cm×4cm)で、内巻きです。花色は淡い桃色地に赤紫色の筋(脈、維管束)が目立ちます。脈と脈の間には赤紫色の砂子模様が入り、中にはぼかしの部分もあります。花被片の周縁部は白く覆輪状に見えます。 大きく上向きに広がって開花します。 なお、外花被片の背軸面(裏側)も同様の模様となっています。
内花被 : 非常に細長く(3cm×1cm)、細長いさじ状で軸方向にまっすぐに立ち上がり、先端部はやや太くやや内巻きになります。
花柱枝 : 外花被片に沿うように配置、先端部は小さく裂開し、先端部にずい弁が発達しますが、小さく先端部は内巻きになります。ずい弁の色は淡い紫色がかった白色をしています。
備考 : 1885年(明治18年)以前に育成された江戸系の古花です。草丈、花茎は70cm以上で高く、花容が上方向にはねあがったような形状で、非常に目立つ形態をしています。
当時の江戸で育成された江戸系品種と呼ばれている品種群は、花菖蒲園で観賞できるように水平に外花被片が展開する平咲きの品種が多いですが、中には変わり咲きと称して、本品種のように外花被片が軸方向の先端部(上方に花被片が展開して開花する爪咲きや玉咲き、受け咲きと呼ばれる花容の品種が存在します(以下、上咲き)。 株全体が軸方向に花菖蒲園では群れて開花すると、変わった花姿をしているので目立ちます。写真では、2列目は左から右に向かって次第に花被片が開いていく状態を示していますが、平咲きにはならず、軸方向に斜め上に直立します。
このように、軸方向に上向きに開花する品種には、同じ江戸系の品種の「白竜の爪」、「黒竜の爪」、「鷹の爪」、「八重玉宝蓮」などがあります。
「玉鉾」、「拳くらべ」は、開花当初は上咲きですが、開花後、平咲きとなります。
本学の研究において、このような「上咲き品種群の成立」について、外花被片が開花に至る、花蕾から開花までの一連の発達段階の中から遺伝的に固定した個体を選抜して育成されてきたことを証明しました(2008年)。
次いでその原因を組織学的な研究から研究した結果、外花被片の表皮細胞の表側、裏側では細胞の形は同じものの、大きさや細胞数に差が生じていることを明らかにしました(2021年)。
「筑羽根」は、やや早咲きの品種で1980年頃には花菖蒲園で見ることのできる品種の一つでしたが、2000年頃からの地球規模の温暖化により、開園前に開花し終わる傾向があるようです。根が細いので土壌温度が上昇すると腐敗しやすい傾向があり、鉢植えでも栽培しにくい品種になっています。
参考文献 :
  • 平松渚・中村泰基・田淵俊人.2009.ノハナショウブの変異性に関する研究(第13報) 茎頂部が花柱枝化し,花被片が形成・発達する移行過程の外部形態と,細胞構造の推移に関する仮説.園芸学研究.8(別2)581.
  • 田淵俊人・矢口雅希・萬代有紀・平松渚・中村泰基・松本和浩.2010.ノハナショウブの変異性に関する研究(第17報)外花被片の形態の定量的評価.園芸学研究.9(別1):437.
  • 田淵俊人.2016. ハナショウブの特徴、江戸ハナショウブの特徴.(「花の品種改良の日本史」柴田道夫監修)、233,244.悠書館,東京.
  • 田淵俊人.2021.「上向きに咲く」ハナショウブ品種における外花被片の組織学的特性について.園芸学研究 20(1)295.

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