もものさと
桃の里
Momo no sato
伊勢系 | 【花容】垂れ咲き 【英数】三英 【花色】桃色 【開花時期】6月中旬から下旬(町田市) 2014年は7月3日開花、2025年は6月15日開花 |
分類 | : | 伊勢系の古花で、松阪桃の里と称している場合があります。垂れ咲きの三英花です。 |
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外花被 | : | 丸弁で周縁部は大きく波打ち、軸方向に大きく下垂します。維管束(脈)の間には非常に細かい縮緬状構造が見られます。 花色は桃色が基本ですが、濃淡には年次変化があります。特に桃色が濃い場合には白色の刷毛のような筋が入ることがあります。この場合には、維管束部(脈)の部分は非常に細い桃色となります。 |
内花被 | : | 丸弁で横幅が広くやや内巻きで、やや斜め上に立ち上がります。外花被と同じく非常に細かい縮緬状構造が発達します。花色は外花被片と同じ桃色で、白筋が入ることがあります。 |
花柱枝 | : | 太く軸方向に直立します。中心部の色は黄色みがかった白色で、周縁部は非常に淡い桃色で、中心部には白色の筋が入っています。先端部で2裂開し、さじ状に内巻きとなrずい弁が発達します。ずい弁は、鋸歯が発達し、しばしば極端に亀裂となって「くも手構造」になることがあります。ずい弁の色は先端部が桃色になります。 |
備考 | : | 戦前に三重県松阪で育成されたと言われている伊勢系の「古花」です。外花被片基部には、内花被片と花柱枝が中心部に集まるようにして構成されているので、黄色のアイの部分が見えにくくなる傾向があります。 冨野氏の分類によれば、外花被片の肩の部分が「怒り肩」に分類されますが、外花被片が硬壁組織で構成されていることが、本学の研究で明らかになっています。 他の伊勢系品種と同様に開花が進むにつれて大きく下垂します。桃色の濃淡が生じる要因は環境による変異よりも個体変異で、年によってはごく淡い白色となり、ほぼ白色になることもあります。 本学の保存株は、内花被片の形状が丸弁に近い内巻きえあること、白色の筋が入ることで類似している品種と区別が付けられます。 なお、本品種は染色体数が普通の品種より1本多い2n=25(普通の品種では2n=24)の品種ですが、本学の研究において、この理由を他の伊勢系品種との間で比較検討した結果、外花被片の下垂の程度や、縮緬状構造には影響しない(無関係である)ことがわかりました。 また、伊勢系の古花の起源となった、三重県松阪市近郊に自生するノハナショウブ、トントン花の個体に染色体数が2n=25の個体が発見されたことから、伊勢系の古花品種群は、三重県松阪市の斎宮地域に自生するノハナショウブに由来することが明らかになりました。1本多い染色体がどのような遺伝情報をもたらすのかについては、現在、研究を進めています。 なお、桃の里と同じように染色体数が1本多い2n=25の品種は、本学の研究で、月宮殿、夏姿、不知火、落葉衣、蓬莱山、残月、宝玉でも確認されています。 |
参考文献 | : |
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